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ペンギンの祖先はオーストラリア周辺で生まれた

by 黒岩留衣
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ペンギンについて考えると、ふと思い浮かぶのは、氷の上をヨタヨタ歩いたり、極寒の南極海で泳いでいる太った鳥だというイメージです。

しかし、ペンギンは、科学者たちが長年信じてきたように、南極で生まれたわけではありません。

カリフォルニア大学バークレー校の研究者による新しい研究によると、ペンギンはオーストラリアとニュージーランドで最初に進化しました。

 

世界中の大学や博物館の協力を得て共同で実施されたこの研究では、18種類のペンギンの血液と組織のサンプルが分析されました。

彼らはこのゲノム情報を使用してペンギンの過去を振り返り、ペンギンの数千年にわたる進化の多様化を追跡しました。

 

「私たちの研究の結果は、ペンギンの『クラウングループ(現存する種の共通の祖先にあたる種のこと:翻訳者注)』が、以前考えられていた南極ではなく、中新世(地質時代)にニュージーランドとオーストラリアで発生したことを示しています」と、この研究の筆頭執筆者であるハーバード大学の進化生物学者スコット・V・エドワーズ教授は述べています。

「ペンギンは最初に温帯環境を占領し、次に冷たい南極海に進出したと考えられます」

 

南極大陸の氷塊からダイブするペンギン:2014年3月撮影

 

ペンギンは2200万年前にオーストラリアとニュージーランドで生まれたと研究者たちは示唆しています。

その後、キングペンギン(王様ペンギン)とエンペラーペンギン(皇帝ペンギン)の祖先が分かれて南極海に移動しました。

これらの調査結果は、キングペンギンとエンペラーペンギンが他のすべてのペンギン系統の『姉妹グループ(現存する種の中で最も原初に位置する種のこと:翻訳者注)』であるという理論も支持しています。

 

その後、今から約1200万年前に、南極と南アメリカの南端の間の水域であるドレイク海峡の氷が溶け、完全に開放されました。

これにより、ペンギンは南太平洋中を泳ぐことができるようになり、亜南極諸島だけでなく、南アメリカやアフリカの温暖な沿岸地域にも広がっていきました。

今日、飛べない鳥はまだオーストラリアとニュージーランドで発見されています。

 

この研究は、変化する気候へのペンギンの適応性と、現代の気候危機によって直面している危険性を明らかにしました。

「私たちの研究は、ペンギンがオーストラリアとニュージーランドの周辺海域での摂氏9度から、極寒の南極のマイナスの気温に至るまで、彼らが今日生息している信じられないほど広範な熱環境を占めるほどに多様化できた方法を示すことができます」とカリフォルニア大学バークレー校の主任研究者であり統合生物学者ラウリ・ボゥイ教授は述べました。

 

「しかし、ペンギンがそのような多様な生息地を占めることができるようになるまでには数百万年を要しており、現在の気候変動によって急速に海が温暖化している状況では、ペンギンはそれに追いつくのに十分な速さで順応することができないでしょう」

 

チームは、ペンギンが厳しい環境で繁殖することを可能にする遺伝的適応性を正確に特定することができました。

たとえば、遺伝子は進化して体温をより適切に調節し、氷点下の南極温度とより暖かい熱帯気候の両方に住むことが出来るようになりました。

しかし、これらの進化のステップには数百万年かかりました。

現在、ペンギンは急速に個体数を減少させており、ペンギンに残された時間はあまり多くはありません。

 

「現在、気候と環境の変化は、一部の種にとって変動に対応するには速すぎます」とチリのカトリック大学のジュリアナ・ヴィアンナ准教授は述べました。

気候変動のさまざまな要素がクライマックスに達しようとしています。

海氷が消えると、エンペラーペンギンの繁殖地や休憩所が減ります。

氷の減少と海の温暖化は、ペンギンの食事の主要な構成要素であるオキアミの減少をも意味します。

 

世界で2番目に大きいエンペラーペンギンの繁殖コロニーはほとんど姿を消しています。

南極大陸の何千羽ものエンペラーペンギンの雛が2016年の嵐によって海氷が破壊されたときに溺死しました。

2017年と2018年にも嵐が再発生すると、コロニーのほぼすべての雛が、その年ごとに全滅しました。

 

エンペラーペンギンの生息数は50万羽程度と推定されてきました。

今世紀末までには全体の約8割が死滅するとも予測されています。

チームを率いる研究者は「海氷は一度解けたら元には戻りません」と述べています。

「コロニーごとに何をしようと、ペンギンを救う手立てはありません。地球環境全体の問題です」と強調しました。

 

南極の一部のペンギンのコロニーは、主に気候変動の結果として、過去50年間で75%以上減少しています。

ガラパゴスでは、ペンギンの個体数が減少しており、温暖なエルニーニョ現象が頻繁に発生し、深刻度が増しています。

アフリカでは、南海岸沖の温暖化により、ペンギンの個体数が大幅に減少しています。

あの愛らしいペンギンたちの命運は、間も無く尽きようとしているのかも知れません。

 

CNN

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