Home 時事ニュース 中国空軍の戦闘機18機、台湾の防空識別圏内に侵入:一触即発の危機

中国空軍の戦闘機18機、台湾の防空識別圏内に侵入:一触即発の危機

by 黒岩留衣
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金曜日、中国人民解放軍空軍は、政情不安定な台湾海峡付近の台湾空域で『実戦さながらの軍事訓練』を強行することで、米国務省高官の台北訪問に対する不快感を露わにしました。

中国空軍機による軍事訓練は、キース・クラック国務次官が首都で台湾の蔡英文総裁と会談する予定であった数時間前に行われ、台湾の中国に対する防御力強化のために、トランプ政権が数十億ドル規模の先進兵器の売却を推進しようとしているとの報道がなされた1日後に強行されました。

 

台湾国防省の声明によれば、中国が台湾海峡の中間線を超えて2機の爆撃機と16機の戦闘機の部隊を飛来させたと述べ、台湾空軍戦闘機のスクランブル発進とミサイル防衛システムの作動により、これに対応したと述べました。

中国による最近の軍事挑発行動は、中国が対潜哨戒機を台湾の空域に飛ばしてから2日後、中国が台北に対して着実に拡大している軍事圧力キャンペーンの一環として、台湾を取り巻く大規模な海軍と空軍の合同演習を行ってから1週間後の出来事でした。

 

ロイター通信の報道によれば、18日に台湾海峡の中間線を越え台湾の防空識別圏に侵入したのは、中国空軍のH-6爆撃機2機、J-16戦闘機8機、J-10戦闘機4機、J-11戦闘機4機の計18機であったと伝えられています。

また台湾の自由時報紙によれば、台湾空軍機が18日朝、中国空軍機に対して4時間にわたりスクランブルを17回行ったと報道しました。

台湾東海岸沿いの花蓮の空軍基地でF16戦闘機に迎撃用空対空ミサイルが搭載される写真も掲載しました。

 

金曜日に台湾の防空識別圏内に侵入した中国人民解放軍所属H-6爆撃機。台湾海峡全体の軍事的緊張が高まっている。:台湾国防省(AP)

 

台湾当局は、世界で最も危険な軍事的引火点の1つであると見做されている台湾海峡周辺の(中国による)軍事的挑発行為の拡大を非難し「このままでは全面戦争に発展する可能性もある」と警告を発しています。

金曜日、台湾の大統領府は「一連の挑発行動は、中国の国際的なイメージを向上させる助けにはならないだろう」と述べ、中国政府に対し、これ以上の『挑発』を慎むように促しました。

 

これに対し、中国国防省のスポークスマン任国強(レン・グオチン)報道官は記者団に対し、金曜日の新たな訓練は「中国の軍隊の安全と、国家主権および領土保全を促進するための合法的な行動」だったと述べました。

彼はまた「最近、米国と民主進歩党(台湾民進党)が共謀・結託し、頻繁に問題を引き起こしている」として米国・台湾両国政府を名指しで強く批判し「彼らは地域の平和と安全を脅かすトラブルメーカーである」と付け加えました。

 

彼はまた「独立を促進するために外国人に依存している」として台湾の与党を非難し、さらに続けて「台湾を政治利用して中国を揺さぶろうと画策している」としてワシントンに対して警告を発しました。

さらに任国強報道官は「火遊びをするものは火傷をするだろう」と付け加えました。

 

北京は、トランプ政権が準公式な外交交流、先端武器の販売、貿易協定の模索などで台湾に接近していることを『怒りに満ちた目で』注視していると述べています。

中国は、正式には独立を宣言したことのない自治民主主義の島(台湾)を、自国の領土の一部と見なし、必要に応じて武力でこれを吸収すると誓約しました。

 

台湾を訪問したキース・クラック国務次官

 

経済問題担当国務次官としてのクラック氏による3日間の訪台は、過去数十年で台湾を訪問した最高位の国務省高官として記録されました。

クラック氏の訪台の目的は、名目上は元台湾総統であり、7月末に死去した故・李登輝氏の追悼式典に出席することですが、訪問の本当の目的は、台北とワシントンの間の将来の二国間貿易協定への道を開く可能性を模索するためであると見られています。

 

先月、保健福祉省のアレックス・アザール長官が台湾を訪問した時も、北京は戦闘機の侵入という形で好ましからざる歓迎の意を示しました。

米国政府が台湾の蔡英文総裁との会談のために高官を派遣することとは別に、トランプ政権は「台湾要塞化計画」の別称で知られる国防総省のプログラムの一環として、巡航ミサイルやドローン(無人戦闘機)を含む7つの主要な先端兵器システムを台湾に販売する準備を進めています。

 

ロイター通信は水曜日にこれを報道しました。

台湾国防省はロイター通信の報道に対し、否定も肯定もしていません。

 

 

2020年9月18日 -breaking news-

(参照:ワシントンポスト


余談になるかも知れませんが、今年6月に開かれた国連人権理事会で、中国による香港国家安全維持法導入の賛否が問われたとき、実は53カ国もの国々が中国を支持していました。

これに対して中国に反対する意思を示した国は、日本を含めてわずか27カ国しかありませんでした。

日本の政治家やマスコミは「国際社会との連携」を口にすることがままありますが、実は自由だの人権だの民主主義だのと言った価値観は魅力的な中国元の前に揺らいでいるのが現実です。

 

今年7月、中国外務省は「世界は今こそ団結して米国による支配に立ち向かうべきである」とコメントしたことがあります。

日本人の常識からすれば悪い冗談にしか聞こえないような状況が現実に起こっています。

仮に中国が台湾に武力侵攻したとしても、ロシアやベラルーシ、北朝鮮といった独裁国家は言うに及ばず、アフリカ諸国や中南米諸国は中国を支持、あるいは不干渉を貫く可能性が高いと言えます。

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