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パンデミックの第二波に直面した欧州

by 黒岩留衣
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英国は過去3週間で新しいコロナウイルスの感染症例が4倍にも膨れ上がり、政府が3月に都市封鎖を課す前よりも多くのcovid-19患者が入院しています。

しかし、ヨーロッパの多くの地域と同様に、英国は現在、英国のリバプールにあるパブを閉鎖するなど、閉鎖対象を狭く絞り込んだ地域的制限を追求している一方で、新たに国家レベルの封鎖や学校の閉鎖を回避するためにできる限りのことをしています。

 

議会への声明の中で、英国のボリス・ジョンソン首相は「私たちの生活と経済を破壊する」ことと「コロナとの戦いを放棄する」ことの両極端の間でバランスの取れたアプローチをとろうとしていると述べています。

「私たちは国家レベルの封鎖に戻りたくはない」と彼は言いましたが「このままではウイルスを打ち負かすことはできない」とも述べました。

英国のボリス・ジョンソン首相

 

ジョンソンは3層構造の警報システムを発表しました。

このシステムでは、現在リバプールを含む最も感染拡大が懸念されている地域では、学校は開いたままですが、パブやバーは閉鎖され、ほとんどすべての世帯間の交流が禁止されます。

第二層に該当する地域では、家族の一員ではない他の人と屋内で会うことは許可されません。

そして、第三層はすでに実施されている措置を遵守する必要があり、パブは午後10時に閉店します。

集会は6人限定です。

「これらの数字はジェット旅客機のダッシュボードの警告のように点滅しているので、私たちは今すぐ行動しなければなりません」とジョンソンは記者会見で述べています。

 

ヨーロッパの他の国々も同様です。

それらは感染症や入院の再発を封じ込めるためにスクランブルをかけていますが、それでも大規模なロックダウンを避けるために妥協案を模索しています。

それでも、彼らは春よりも企業や個人からの怒りや欲求不満に直面しています。

 

ケンブリッジ大学の微生物学者であるラビ・グプタ博士は、英国や他のヨーロッパ諸国では​​「完全な封鎖は政治的議題から外れている」と述べました。

これは、新型コロナウイルスそのものというよりは、むしろウイルスを取り巻く「恐怖要因」が理由であると考えられています。

完全な封鎖は「死と感染」を制限するのに最適ですが、彼は「人々が権威主義体制以外で、長期的な制限に耐えることができないことは明らかです」と述べました。

 

フランスは、症例数と入院数が急増した後、さらなる制限を課す可能性があることを示唆しました。

土曜日に、当局は過去24時間に27,000件の新しい症例を報告しました。

これは新しい記録です。

そして月曜日、保健当局は、covid-19のために入院した人々の数が6月下旬以来初めて8,600人を超えたと発表しました。

ジャン・カステックス首相は「今後2週間で指標が悪化し、集中治療室が想定以上に埋まった場合は、追加の措置を講じるだろう」と述べ、住宅での集会を制限するよう人々に促しました。

フランス政府は、2回目の全国的な封鎖を課すことを避けましたが、主要な都市部で、特にレストランの客数定員とアルコールの販売時間に新しい制限を設けました。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は水曜日の夜に国民に演説する予定です。

 

10月12日:国民の日の式典で、マドリードの王宮の外でスペイン政府による対応に抗議する人々

 

スペインでは、社会労働党のペドロ・サンチェス首相が金曜日にマドリッドへの出入りを封鎖するために緊急事態宣言を発令し、近隣レベルの緩やかな封鎖を支持していた地方政府の決定を覆しました。

政府の強硬な対応への反発は、月曜日のスペインの建国記念日の祝賀会で明らかになりました。

人々は王宮のイベントの外縁に集合し、サンチェス政権を非難しました。

極右のVox党は「全体主義的政府」に抗議するためにキャラバンを率いました。

マドリッド地域では、過去7日間で20,000件を超える新しいコロナウイルスの症例が報告されており、ヨーロッパの第2波で最も被害が大きかった地域の1つとなっています。

 

ベルギーでは、先週一週間で診断された感染症例は、その前の週より89パーセントも増加しました。

全国コロナウイルス対応チームの報道官イヴ・ヴァン・レーセム氏は月曜日に、現在の傾向が止まらなければ、10月末の集中治療室の人々の数は、3月と4月に見られた高さに匹敵する可能性があると警告しました。

「あらゆる指標が驚異的なほどに増加し続けています」とヴァン・レーセムは記者団に語っています。

 

ドイツは月曜日に、新しい制限を余儀なくされるコロナウイルスの「レッドゾーン」のリストにミュンヘンを追加しました。

水曜日の時点で、ミュンヘンのバーやレストランは午後10時以降のアルコールの提供が禁止されます。

歩行者はマスクの着用が義務付けられており、2世帯以下または5人までのグループでの会合しか許可されません。

葬儀や結婚式のようなプライベートな屋内イベントの参加者数は25人まで、屋外イベントの参加者数は50人までに制限されます。

規制は10月27日まで少なくとも2週間有効です。

 

イタリアでは、1日の症例数は他の西ヨーロッパ諸国で見られるほどの数には達していませんが、それでもその増加軌跡は心配です。

そして何より懸念されることは、春の発生が国の比較的豊かな北部を襲ったことに対して、現在はより弱い経済と医療システムしか備えていない南部を中心に広がっていることです。

 

イタリアは先週、マスクを屋内だけでなく屋外でも着用することを全国的に義務付けており、これまでのところほとんどがこの措置を順守しているようです。

ロイター通信によると、政府は現在、プライベートパーティーの禁止や結婚式や葬儀のゲスト数の上限を含む新しい措置を検討しているとのことです。

月曜日、ジュゼッペ・コンテ首相は新たなる国家封鎖を選択肢から除外したものの、必要に応じて局地的な封鎖を実行する可能性はあると述べました。

 

イギリスでは打撃を受けた飲食・観光業界からの強い反発がありました。

多くの人が、企業が最新の制限に耐えられないのではないかと懸念しています。

リーズでパブを経営しているニコラ・ストーリー氏は、最も苛立たしいことの1つは、終わりが見えないことであると述べました。

英国での完全な封鎖中に、彼女のパブはすでに「数千ポンドの借金」に陥っていると述べ、今後さらに経済的混乱が生じるのではないかと心配しています。

「解決策に対する終着点がないように感じます。制限は増えていく一方ですが、いったいいつまで続くのでしょう? これから抜け出す計画はないように感じます」

 

野党労働党の党首であるキール・スターマー氏は、ジョンソン氏が危機に対処する戦略を持っているか否か「非常に疑わしい」と述べました。

彼は、局所的な発生に焦点を当てたジョンソンの「モグラたたき」戦略は、具体的な効果を挙げていないと述べました。

「現在、20の地域が2か月以上、何らかの制限を受けていますが、そのうち19の地域では感染率が上昇しており、さらに一部では非常に急激に増加しています」とスターマー氏は述べています。

 

一方、米国では、トランプ大統領が、彼自身の感染対策の正当性を守るためにヨーロッパでの感染の増加を引用しました。

大統領は、自らcovid-19で入院してから1週間後「ヨーロッパやその他の場所での『チャイナペスト』の急増は、米国の見栄えを悪くするために、メディアが感染対策に成功した例として掲げていた場所だ」とツイートしました。

 

トランプは「皆さん、ウイルスを恐れないでください。それ(ウイルス)にあなたの生活を支配させてはなりません」と述べ、次のように付け加えました。

「ウイルスはすぐに消えて無くなるでしょう。 ワクチンと治療法の開発が急速に進んでいます!」

 

 

Second wave of covid-19 in Europe leads to new restrictions but no national lockdownsより抜粋

The Washington Post


ところで本文にはありませんが、ロシアは感染対策のほとんどを事実上解除しました。

ロシアではコロナウイルスの感染拡大が沈静化したのではなく、実際にはむしろ逆に目を覆いたくなるほどに急激に拡大しています。

だとしたら、なぜプーチン大統領は各種の制限を緩和したのでしょう?

 

その答えは選挙が近いからです。

国民に新たなる厳しい制約を課す場合、強い反発が予想され、それが反体制派を勢いづかせ、自身の政治基盤を揺るがすことを懸念したようです。

批判家はプーチンとトランプは同盟者だと皮肉を言うことがありますが、コロナウイルスに対する対処法に関しては、確かに『同盟関係』にあるように見えます。

 

管理者 黒岩留衣

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