Home ウォールストリートジャーナル デトロイトの半導体不足問題は自己の責任

デトロイトの半導体不足問題は自己の責任

by 黒岩留衣
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アメリカ自動車メーカーは半導体不足に直面しています。

デビー・スタベノウ上院議員(民主党:ミシガン州)は「台湾の一企業による出荷抑制の判断」のせいだと非難しているようです。

ですが、この発言は不正確であり、誤解を招くものです。

外国企業を非難するスタベノウ氏の扇動は、アメリカ自動車業界の従業員を職場に復帰させるというアメリカの課題の解決を妨げるものとなるでしょう。

 

アメリカ自動車業界が半導体供給問題に直面していることは確かなことですが、これは主に自分たちが招いた問題だといえます。

業界は2020年の早い段階で、必要な生産台数の見通しを誤ったのです。

新型コロナウイルスの大流行が始まった当初、アメリカ自動車メーカー各社は、自動車需要の大幅減を予想して半導体の発注を大幅に減らしたのでした。

ところが需要の減少幅が予想したほど大きくなかったため、各社が発注した半導体は生産に必要な量を満たせなくなったというわけです。

 

この問題に介入したのはアメリカの政治家と業界団体だけではありませんでした。

ドイツのペーター・アルトマイヤー経済相は、台湾経済部(経済省)の王美花部長(経済相)に書簡を送り、同様の半導体不足に苦しむ独自動車メーカー向けの出荷を優先するよう、台湾の半導体メーカーに、特に台湾積体電路製造(TSMC)に圧力をかけることを検討してほしいと要請しました。

 

ドイツは中国政府寄りで台湾を軽視する傾向が強いため、優遇対象にはなりにくいという事情がありました。

しかし、ドイツの書簡は米国に影響を及ぼしたのでした。

バイデン政権のブライアン・ディーズ国家経済会議(NEC)委員長も王氏に書簡を送り「われわれは、供給可能な生産品の納入を求める米国企業のために、公平な環境を確保する貴国の取り組みに感謝している」と述べました。

台湾がドイツの圧力に屈し、米国企業の利益が二の次になることをディーズ氏が懸念するのは当然だったと言えましょう。

 

一国の政府が、自動車のような優先される業界の利益のために、法的拘束力のある契約を修正するよう国内外の企業に圧力をかけられるのだとしたら、貿易の本質やそれを規定する法律に重大な懸念が生じると言っても過言ではありません。

 

The Wall Street Journal

ルパート・ハモンド・チェンバース米台商業協会会長による寄稿文

原題:A Chip Problem of Detroit’s Own Making
Sen. Stabenow scapegoats Taiwan for a miscalculation by U.S. car makers.

 

引用元:https://www.wsj.com/articles/a-chip-problem-of-detroits-own-making-11614901470

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