■全体をざっくり一言で言うと
カブスのチームオプションを使うと“3年まとめて”保証しなきゃいけない。
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それはリスクが高いから使わなかった。
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今永はFAに。
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そこで QO(1年2200万ドル)」を受けた。
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“長期リスクを避けたいカブス”と“来年もう一度勝負したい今永”が利害一致した。
この流れです。
■1. 今永の元の契約構造(めちゃくちゃ特殊)
MLBでは珍しい「複数のオプションが連動する構造」でした。
●契約の基本
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全体は 4年 5200万ドル(14M×2年+保険的なプレイヤーオプション)
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2年目終了後に
カブス側のチームオプション(まとめて数年延長できる権利) があった
●問題のポイント
チームオプションを「行使」すると…
→ 残り3年分(2026~2028)が全部一気に確定する
→ 年平均19.5M前後×3年、総額約5800万ドル分を一括で背負うことになる
→ しかも フルのトレード拒否権つき
つまり
オプションを行使=今永の33〜35歳の3年分をガッツリ保証
になる。
これは、シーズン後半の失速や球速低下を見た球団にとって、かなりリスクが大きい。
■2. カブスが「オプション行使しない」とどうなる?
●カブスが行使しない → 今永にプレイヤーオプションが発動
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今永側は
1年1500万ドル(最低保証)
または
2年3000万ドル(プレイヤーオプション)
を選べた。
しかし今永は 「自分はもっと上の額を市場で取れる」と判断して拒否。
こうしてFA(=完全自由契約)になった。
■3. FAになった今永に対して、カブスがQOを出す
ここが大事。
●QO(Qualifying Offer)とは?
FA選手に対して
1年契約(今年は2200万ドル) を提示できる制度。
選手が断って他球団と契約すると、元の所属球団に ドラフト指名権の補償 が入る。
●今永の場合
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カブスはQOを出した(1年22Mの提示)
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今永はこれを 受けた
→ これで2026年の年俸は2200万ドルに確定。
※QOは「元の契約とは完全に無関係」
なので、
元の複雑なオプション構造はすべてリセットされる。
■4. なぜカブスはQOを出したのか?
チームの狙いはこう。
◆A. 3年保証は重すぎるが「1年だけならOK」
33歳の投手に対して
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球速低下
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HR増加
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後半戦の悪化
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ハムストリング再発疑惑
などを踏まえると
3年まとめて約6000万ドル+NTO(ノートレード権)
はリスクが大きい。
しかし
1年2200万ドル
なら全然許容できる。
◆B. 契約が1年で切れるのは球団にもメリット
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ローテの厚みを維持
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スティールの復帰が遅れてもOK
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タイヨンをトレードで出しやすくなる
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来年大活躍したらまた延長交渉すればよい
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来年悪くても切れる
つまり
長期のケガ・劣化リスクは避け、
短期の戦力は確保したい。
という「一番おいしいところだけ取る」動き。
■5. なぜ今永もQOを受けたのか?
今永側の利点もかなり大きい。
◆A. 年俸アップ
元の契約なら
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2026年は1400〜1500万ドル程度。
QOを受けたことで
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いきなり2200万ドルにアップ
◆B. 来年FAするとき「QOが二度目はつかない」
MLB規則で、
QOは一人の選手に生涯一度まで。
→ 来年FAになっても、QOの指名権補償がつかない
→ 市場で“重し”が減る
複数年契約を狙いやすい。
◆C. ロックアウト(2027)への対応
2027年はCBA交渉でロックアウトの確率が高いと言われている。
QOを受けて「1年のみ」にしたことで
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2027年にMLBが止まっても
→ NPBでプレーできる可能性が残る
(MLB契約があるとロックアウト中は原則プレー不可)
ここを狙ったと言うファンも多い。

