昔、一斉を風靡した漫画に『北斗の拳』という作品がありました。
非常に好きな作品で連載当時はよく読んでいましたね。
この北斗の拳の作中の設定に「北斗七星の脇に輝く蒼星を見たものは程なく死ぬ」という不吉の星『死兆星』が登場します。
この死兆星、実は本当にあるって知っていましたか?
昨日に続いて星のお話です。
北斗七星は北極星の近くにあるため、ほぼ一年中見えますが、最も見やすいのは観測しやすい夕方〜夜にかけて空高くに昇る春だと言われています。
北斗七星の名前の由来は、北天で輝く7つの星の並びが柄杓の形に見えることから、柄杓を表す「斗」を用いて、そのように呼ばれるようになったと言われています。
ところで、全天に88あると言われる星座の中には北斗七星はありません。
北斗七星はおおぐま座の一部で、熊の腰からしっぽに当たる部分です。
おおぐま座を今の形に定めたのは、古代ギリシアの人々ですが、 不思議なことにギリシアから遠く離れた地でもおおぐま座やその一部の北斗七星を「クマ」と見立てています。
日本でもアイヌ神話では神に逆らったクマが天空に投げ上げられて星になったという伝承があるそうです。
北斗七星はその名の通り、2等星が6つ、3等星が1つの7つの星で構成されていますが、柄杓に見立てた時の持ち手の先から2番目の星のをよく見ると、寄り添うように輝く蒼星が見えてきます。
1つは2等星のミザールで、もう一つは4等星のアルコル。
このアルコルが死兆星の話のもととなった星ではないかと言われています。
アルコルは十分視力のいい人が見ると肉眼でもはっきり見ることが出来るのですが、視力のあまり良くない人は見えないので、昔アラビアの世界ではこの星を使って兵士の徴用のための視力試験を行い、アルコルが見えたら合格としていたと言われています。
つまり、死兆星が見えない者は、兵士として採用されなかったことになりますね。
人間は歳を取ると、どうしても視力は衰えるもので、若い頃は死兆星がはっきりと見えていても、歳をとると見えなくなることもあるでしょう。
そう考えると、むしろ死兆星が見えなくなったら歳をとった証拠と言えないこともありません。
『北斗の拳』のストーリーとは真逆です。
学生の頃、友人と夜空を見上げて『おい、死兆星が見えるぞ』とワイワイ騒いでいたことがありました。
友人は『お前、もう直ぐ死ぬよ』とか笑っていましたが、見えない彼の方がよっぽど死期が近かったのかもしれません。