社会的距離を離すのは難しいと思いますか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が深刻になるなか、多くの人々が他者との接触を避けたり、自宅にとどまったりすることを余儀なくされています。
米国でも、感染の拡大を減速させるため、人と人とが「社会的距離」をとるようにというガイドラインが発表されています。
しかし、感染症が当たり前の自然界では「社会的距離」をとる戦略は、とりたてて新しい概念というわけではないようです。
病気のアメリカウシガエルのオタマジャクシにさらされた、健康なオタマジャクシは、病気に感染したオタマジャクシに近づかないように最善を尽くすことが知られています。
アリは自分が病気のときは仲間に近づかないようにしています。
むしろ他の動物たちの方が、私たち人間よりも社会的距離をとることに優れているようです。
多くの人間にとって、社会的距離は世界で最も不自然なもののように感じますが、自然界の他の領域ではそれが当たり前なのです。
感染した動物が近づきすぎると、他の動物は近づかないように学習します。
病気になるのを防ぐために、感染した動物の周囲で動物の行動が異なるかどうかを確認するために、研究者は過去数十年にもわたって研究を行ってきました。
自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーヴァンシーの主任研究員であるジョセフ・キーゼッカーは、アメリカウシガエルのオタマジャクシが社会的距離に優れていることを発見しました。
「彼らに『感染した個体に接近することができる』という選択を与えた場合、彼らはそうすることを避け、社会的距離とろうとしたことは明白でした。彼らはその感染した個体を明らかに避けました」と彼のべました。
キーゼッカーは、他の健康なオタマジャクシの周りに病原体に感染したオタマジャクシを配置するという実験をおこないました。
オタマジャクシは、病気のオタマジャクシからの化学物質の匂いを嗅ぎ取ることが出来たようです。
キーゼッカーの調査結果によると、そのオタマジャクシがウイルスに感染していることを検出すると、健康なオタマジャクシは近づきませんでした。
研究の一部で、キーゼッカーは健康なオタマジャクシを感染したオタマジャクシの近くに保つこともテストしました。
キーゼッカーは「私たちが彼らをすぐ近くに留まらせ、次に彼らが感染しているかどうかを調査したとき、彼らが感染した可能性は、既に感染した個体との距離の近さに比例して増加していました」と語りました。
オタマジャクシは、自分の仲間の病気のメンバーから社会的距離を置く唯一の動物ではありません。
庭アリは、感染したアリが健康なアリのグループに投入されると、自ら進んで社会的距離を隔てる行動を実践します。
ブリストル大学生物科学部の講師であるナタリー・ストロイメイトは、真菌病のアリが健康なアリのコロニーに投入されたときにどのように行動するか観察しました。
その結果ストロイメイトは、暴露したアリが暴露していないアリから離れており、そればかりか健康なアリも互いに遠く離れていたことを発見しました。
「これは、Covid-19の伝染のリスクを減らすために私たち人間社会で実施されている社会的距離の形とは異なり、コロニーを介した伝染病の集団感染のリスクを減らすためのより積極的な対策であると信じています」とストロイメイトは語りました。
米ノースカロライナ州立大学の昆虫学植物病理学部の博士研究員アリソン・マカフィーによれば、ミツバチはもっと苛烈で、病気の個体を容赦なく追い払うそうです。
ミツバチの場合、アメリカ腐蛆病(ふそびょう)のような細菌性疾患は特に破壊的で、コロニーの幼虫が感染すると体内から液化してしまうそうです。
マカフィー氏の研究によれば、感染した幼虫は、オレイン酸、ベータオシメンといった『死のフェロモン』を放出するといいます。
成虫たちはそのにおいに気付くと、文字通り、病気の個体を巣から放り出すのだとマカフィー氏は話しています。
さらにフロリダ大学の海洋生態学の教授であるドナルド・ベーリンガー氏によれば、ロブスターも病気の回避のパターンを示していると報告しています。
彼は健康なロブスターが病気のロブスターから社会的に遠ざかることを示す研究に取り組みました。
「健康なロブスターは、感染したロブスターの尿中の化学的サインを感知して、病気のロブスターを検出し、回避することができます」とベーリンガーは言いました
アリとは異なり、不健康なロブスターは行動パターンを変えませんでした。
病気のロブスターは健康なロブスターに続いて洞窟に入って行き、その後、健康なロブスターが洞窟から去り、次に太陽が昇るまで彼は一人になるだろうとベーリンガーは言いました。
これらの動物から学んだ教訓は、彼ら自身の種に限定されるものではありません。
疫学者はこのような研究を利用して、人間を含む他の種の間で病気がどのように広がるのかをよりよく理解しているとキーゼッカーは語ります。
こうした理解により人間は「自分の行動を変える」ことができ、感染の可能性を減らすことができると彼は言いました。
「行動は重要です」とキーゼッカー氏は語り「オタマジャクシはニュースを見ることはできませんが、人間にはそれができますから」と述べました。
(参照:CNN science)