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ロックダウンは最善の処置だったといえるだろうか?

by 黒岩留衣
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新型コロナウイルスへの感染拡大対策として、過去には使われていなかった厳しい措置を多くの政府が実施しました。

日々の活動を厳しく広範に制限したこともあり、世界は大恐慌以来、戦時を除いて最も深いスランプに陥ってしまいました。

米国だけで1300万人、世界全体で4億人が職を失ったとされています。

国際通貨基金(IMF)によると、今年の世界生産は5%減少と、金融危機時よりずっと悪くなる見通しです。

 

政策担当者は経済危機を公衆衛生危機の副産物であるとみなし、自分たちに選択肢があると考えた当局者はほとんどいませんでした。

ハーバード大学の経済学者ジェームズ・ストック博士は「われわれは経済的大惨事の入り口にいる」と述べています。

ストック博士は同じくハーバード大学の疫学者マイケル・ミーナ博士らと共同で、経済的ダメージの大きなロックダウンを回避し、それでも死者の急増を避ける方法を思考しています。

 

3月下旬、人影をなくしたシカゴ

 

パンデミックと経済活動は密接な関係にあるため、多くの疫学者やエコノミストはウイルスが制御できないうちは経済は回復できないだろうと考えているようです。

連邦準備制度理事会(FRB)は7月下旬、「経済の道筋はウイルスの先行きに大きくかかっている」と述べています。

仮に容認できる感染水準がゼロ以外にないのなら、つまりウイルスの完全なる駆逐を目指すのなら、ロックダウンは当然、非常に厳しいものにならざるを得ず、無期限か、あるいは少なくとも効果的なワクチンか治療薬が登場するまで続けられることになるでしょう。

そして、大半の国はこの選択を拒絶しました。

 

そのため、中国が武漢と周辺の湖北省を1月にロックダウンし、イタリアが3月に外出禁止令を発令した際、他国の多くの疫学者は不要に有害で、効果がない可能性すらある措置だと考えたといわれています。

ところが3月下旬までに、彼らは考えを変えました。

死にゆく大勢の患者たちを前に途方に暮れるイタリアの病院の凄惨な光景は世界中の人々に衝撃を与えたからです。

COVID-19はインフルエンザよりもずっと致死性が強く、無症状のうちに他者に感染させることもあり、ワクチンや有効な治療薬は存在していませんでした。

 

台湾、韓国、香港は、ロックダウンなしにCOVID-19を如何に食い止めるかを示す初期段階の一例です。

彼らの反射神経は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザなどで鍛えられており、即座に中国との往来を停止し、広範な検査を導入して感染者を隔離すると接触者を追跡し始めました。

 

一方、北欧のスウェーデンは異なるアプローチを採用しました。

ロックダウンの代わりに、緩やかな規制のみを課し、病院が扱えるレベルに感染を抑えようとしたのです。

 

多くの国とは異なり、スウェーデンはロックダウンを強制しなかった。

3月の時点で、米国が東アジアの検査・追跡戦略を見習うには余りに遅すぎました。

なぜならばCDCは検査キットの開発・配布の初動で失敗していたからです。

限られた乏しい検査能力は、無数の感染者が何カ月も検知されないことを意味していました。

 

しかもドナルド・トランプ大統領は検査を軽視し続けました。

そして現在でさえ、米国は確認された感染例1件当たり20件未満の検査しかしていません。

これに対し、台湾や韓国ではピーク時には同500件を超えていました。

 

一部の国では、ロックダウンで確かに抑え込むことが出来たようです。

中国は湖北省の感染拡大を封じ込め、他の地域でその後発生した流行も制圧しています。

徹底した隔離と監視手法によるものですが、欧米の民主国家で同じことをするのは困難であると言えます。

 

ニュージーランドは2カ月間もロックダウンを実施しました。

国土面積が比較的小さく、周囲を海に囲まれて地理的に孤立している同国は102日間、新規感染者を出すことなく過ごすことができました。

ですが、今月になって新規感染者が再び出たため、広範囲に及ぶ制限措置を改めて講じることになりました。

 

米国ではほとんどの地域で、中国の独裁的な気概とニュージーランドの忍耐力が欠けていたと言わなければなりません。

トランプ大統領は3月、ロックダウンが何カ月も続くのかと聞かれ「それよりも早く終わることを期待する」と答えました。

大統領の保健衛生アドバイザーらは4月半ば、ロックダウンを実施している州がいつそれを解除して、経済活動を再開すべきかについてガイドラインを発表しました。

ファウチ所長は記者団に対し「われわれがガイドラインで何よりも重視したのは、米国民の安全と健康だ」と語っています。

 

ところが同日、トランプ氏は経済が最優先だと断言するに至ります。

彼は「ロックダウンが長期に及び、不景気を強いられるなら、国民の健康に甚大かつ広範囲な被害をもたらすだろう」と述べました。

それから数週間もたたないうちに、トランプ氏はガイドラインの基準を満たしていないにもかかわらず、経済活動を再開した州を称賛し、ロックダウンを継続しようとする州知事に向けて「解放せよ(LIBERATE)」とツイートしました。

 

 

ギャビン・ニューサム知事

カリフォルニア州は3月19日、外出禁止令を全米で初めて出した州です。

民主党のギャビン・ニューサム知事は、5月7日、非常に野心的な目標を掲げました。

過去2週間で死者数ゼロ、新規感染者数が住民10万人当たり1人だった郡だけが前倒しで経済活動を再開できるというものでしたが、地元有力紙ロサンゼルス・タイムズによると、カリフォルニア州の95%が達成できなかったそうです。

やがて同州では経済的・社会的圧力が高まり、郡の指導者らは基準の緩和を求めるようになりました。

ニューサム知事は5月18日、死者数ゼロの条件を削除し、新規感染者数の上限を10万人当たり25人にまで引き上げざるをえませんでした。

 

各郡はすぐさま経済活動を再開し始めました。

それから1カ月後、カリフォルニア州の感染者数は再び急増し始め、現在では鎮静化の傾向が見られるものの、一時は全米でも有数のホットスポットと見做されるほどに悲惨な状況になってしまいました。

 

同州のマーク・ガリ保健福祉長官は「失業者数が天井知らずに増加し、企業活動も週単位ではなく(永久に)再開されない可能性があるなら、そうしたことも考慮しなければなりませんでした」と苦しい胸の内を明かしています。

そして、その結果は「大失敗だったと言えます。経済に深傷を負わせ、何が正しくて何が間違っているのか、明確な方針も定まらず、今も右往左往しています。この間に企業は徐々に倒産へと向かっています」と前出のハーバード大のミーナ博士は述べています。

 

過去5カ月の苦い経験はロックダウン以外の代替策が必要であることを示しているとミーナ博士は言いました。

つまり、ロックダウンを選択するのではなく、それでも最大限の命を救い、経済的・社会的混乱が最小限で済むような措置を模索するべきだということです。

ミーナ博士は「経済的恩恵が最も大きく、且つリスクが最も小さい対策を再度実施する」ことが必要だと指摘します。

 

ミーナ博士とストック博士のチームは「スマート」な再開プランを考案しました。

それは5つの人口統計グループと66の経済セクターにおける接触頻度とぜい弱性に基づき、物理的距離の確保やウイルス予防策、在宅勤務に関する業界のガイドラインに沿って大半の企業が活動を再開することを想定しています。

学校の再開、マスク着用の義務化、教会やインドアスポーツ施設、バーの閉鎖は維持するという計画も盛り込まれています。

 

彼らの試算によると、全ての制限措置が直ちに解除された場合と比較して、このプランでは年内の米国内の死者数を33万5000人少なく抑えられると言います。

加えて、第2次ロックダウンが実施された場合よりも経済生産性は10%高いそうです。

 

「こうした全ての措置を使えば、死者数を少数に抑えつつ、経済活動を再開する大きな余地が生まれるでしょう」とストック博士は指摘します。

彼は「ロックダウンという手段は単刀直入だが非常に高くつく選択です」と述べました。

 

(参照:ウォールストリートジャーナル


初めて中国の都市封鎖の様子を映像で見た時、確かに私は唖然としました。

臨時の病院を建設するために出た大量の土砂を、郊外の幹線道路に撒いて物理的に封鎖していたからです。

これでは都市それ自体が巨大な牢獄ではないかと思ったものです。

ロックダウンはいわば劇薬で、継続可能な対処法ではないのは事実だろうと思います。

優れた改善策があるのなら、耳を傾ける価値はあります。

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