Home 時事ニュース 一人の女性判事の死が加速させる米国の分断

一人の女性判事の死が加速させる米国の分断

by 黒岩留衣
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今日は心が痛む日です。

アメリカの法的歴史における偉大なる開拓者の一人であるルース・べーダー・ギンズバーグの死のためだけではありません。

彼女の死が、すでに壊れやすい状態にあるこの国の政治制度のさらなる非合法化を予見させるからです。

偉大な裁判官の逝去が私たちの民主主義の危機を加速させることを望んではいけません。

しかし、そうなるのではないかと恐れています。

 

土曜日の朝、キングスバーグ判事の死を悼み捧げられた花束

 

米国は何年にもわたって分裂しており、民主党と共和党が同意できるものはますます少なくなっています。

Facebookとフォックスニュースの時代には、基本的な事実でさえ論争の的となっています。

人口の約40%が「移民は実存的な脅威であるが、地球温暖化は存在しない」という仮想現実の泡の中に閉じ込められています。

陰謀説と「フェイクニュース」が急増し、何百万人ものアメリカ人がそれを信じています。

 

トランプ大統領はこれらの恐ろしい傾向を加速させました。

彼は日常的に彼の政治的反対者を「反逆者」と非難し、マスコミを「国民の敵」と呼び、彼が勝てない選挙は「詐欺」であり、公務員は彼に対して反乱を企てる「ディープステート」の一員であると主張します。

彼は、彼を支持しなかった州を気にかけることすらしません。

その種の有毒なストーリーは大きな被害をもたらします。

 

昨年のピューリサーチセンターの世論調査では、民主党の45%と共和党の38%だけが、対立する党のメンバーと「価値観と目標」を共有していると述べていました。

このことは、バイデンまたはトランプを支持する有権者には、対立する候補者を支持する友人がほとんど居ないことを意味しています。

 

危機管理の専門家たちは、現在の傾向が続く場合、今日のすでに憂慮すべき水準をはるかに超えて、重大な社会不安と暴力を目にする可能性があることを危惧しています。

社会学者ジャック・A・ゴールドストーンとピーター・ターチンは、社会不安を追跡するモデルを開発しました。

彼らは10年前、アメリカのエリートによる所得格差の拡大と利己的な行動に基づいて「アメリカは100年以上にわたってこの国で見られる政治的危機に対する最高レベルの脆弱性に向かっている」と予測しました。

トレンドは「2020年頃にピークに達するであろう」と予測しました。

ゴールドストーンとターチンが「波乱の20年代」と呼んでいるものは、復讐心とともに顕在化しつつあります。

 

故ギンズバーグ最高裁判事:彼女はリベラル派のアイコンであり、同性愛者の守護者であり、女性の権利向上の献身者だった

 

現在、彼らが予測したように、米国は「さらなる大きな抗議と暴力」に直面しています。

民主党は、ドナルド・トランプが「再選された」場合、アメリカの民主主義は存続できなくなると確信しています。

共和党は、ドナルド・トランプが「再選されなかった」場合、急進的な社会主義者がエリート層の富を略奪し、それを貧しい人々やマイノリティに不当に分配し、米国の経済を永久に破壊すると確信しています。

 

双方はまた、対立する他方の側が将来の選挙で公正に競争することを不可能にするような方法で、民主主義の「ゲームのルール」を変更するつもりであると確信しています。

連邦最高裁判所は伝統的に、憲法を守護し、中立的な「ゲームのルール」を支持する唯一の機関でした。

 

2016年に上院多数派院内総務のミッチ・マコーネル上院議員は、当時のバラク・オバマ大統領が指名した穏健左派の裁判官メリック・ガーランドに対する聴聞会を行うことを拒否したことがありました。

マコーネルは「大統領選挙の選挙年に後任候補者を考慮すべきではない」というルールを発明することにより、彼の妨害主義者との非難から逃れました。

事実、トランプ新大統領がニール・M・ゴルスチを指名できるまで、彼は最高裁判所に空席を残したままにしました。

 

もしもマコーネル上院多数派院内総務が、次期大統領がホワイトハウスの新しい主として迎えられるより前に、故ギンズバーグ判事の後任を定めることを認めた場合、どれほどの混乱と損害が発生するか想像してみてください。

さらに、この新しい判事が中絶権、医療制度改革法、そして大統領選挙の結果さえも決定する可能性があると想像してみてください。

その結果、私たちの民主主義制度は根底から揺さぶられるでしょう。

現在の政治的危機が、振り返ってみれば、あたかも「楽園の中の出来事」であったかのように思えるほどの破滅的危機を招来するでしょう。

 

マコーネル上院多数派院内総務が拠って立つべき場所は共和党ではなく共和国であるべきです。

故に彼はそれ(次期大統領が就任する前に最高裁判事の後任を定めること)だけは許してはなりません。

 

 

2020年9月20日付 政治コラムニストのマックス・ブート氏による寄稿文

Ginsburg’s passing may worsen the crisis of our democracyより引用

The Washington Post


アメリカ人は進化論を信じないという話を聞いたことがあるかと思います。

そうした人々の多くは米国では「福音派」または「エヴァンジェリカル」と呼ばれる人たちであり、共和党の熱心な献身者であり、聖書に対して保守的な思考をする人たちです。

このことは共和党と民主党の対立の根底は米国民の宗教的価値観の断絶に由来しており、それ故に米国人の精神的団結は極めて困難であることを意味しています。

 

連邦最高裁判所の判事には任期はなく、辞任か死亡以外には入れ替わりはなく、欠員が発生した場合には大統領が後任候補を指名し、上院で公聴会が行われます。

仮にトランプ大統領が選挙で敗北したとしても、制度上は来年1月の就任式の日まで大統領職を追われることはなく、選挙によって有権者に支持を得られなかった大統領が最高裁判所の判事を指名することも可能になり、マコーネル上院多数派院内総務はオバマ政権時にこれを拒否したことがあったわけです。

 

ですが、トランプ大統領は前例を踏襲しない可能性があります。

コロナウイルスの感染拡大は大統領選挙にも影響を与えており、郵便投票の拡大が議論されていますが、トランプ大統領は郵便投票は詐欺の温床になると主張しています。

万が一、トランプ大統領が選挙で敗北したとしても、彼は「不正選挙」を主張し、ホワイトハウスから撤退しない可能性が危惧されています。

そうなった場合、訴訟が起こされ、最高裁判所が判断を下すことになります。

 

コラムニストのマックス・ブート氏は明言こそしていませんが、トランプ大統領が自身に有利な判断を得られるように最高裁判所の後任判事を選んだ場合、民主主義制度の崩壊の危機という最悪の大混乱が発生する可能性があると警告しているわけです。

そして、その混乱の源泉が宗教的価値観の相違に由来する以上は、そこには科学も理屈も理念さえも存在せず、ただひたすらに感情論だけが刺激され、米国を憎悪と復讐が支配するだろうと予言しているわけです。

管理者が確認した限りですが、米国の全てのメディアが1つの例外もなく、1人の判事の死亡をトップニュースとして報道した理由の一つがそこにあります。

 

 

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