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太平洋の向こうのもう一つの討論会

by 黒岩留衣
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米国大統領ドナルド・トランプと民主党の挑戦者ジョー・バイデンが世界中のテレビ視聴者の前でお互いを引き裂き合った数時間後、太平洋の反対側で非常に異なる様相の党首討論会が行われました。

 

それぞれの年齢を合計すると、米国大統領を争う白髪頭の2人の男性よりも50歳も年下に相当する2人の女性は、ニュージーランドの将来のリーダーシップについて比較的穏健な議論を展開しました。

火曜日、米国の討論会に注目した世界中の数百万人よりはるかに少ない聴衆の前で、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相と野党党首のジュディス・コリンズは衝突し、議論しましたが、彼女たちはお互いに笑い、時には褒め合いました。

 

オンエアー中、トランプとバイデンと、さらには司会者までもが参戦して熱いバトルを繰り広げたのと同じ日、アーダーンとコリンズは適度に礼儀正しく話し合いました。

司会者のパトリック・ガワー氏からの質問のいくつかでさえ、太平洋全体でより親切で穏やかな政府との印象を与えました。

 

討論の終わりに向かう頃、司会者のガワー氏は2人の女性に「もしも休暇が与えられたとしたら、行きたい場所は?」と尋ねました。

「それは簡単な質問ですね、チャタム諸島です」とコリンズは言いました。

「私はスチュアート島に行ったことがないのです。それは本当に大きな後悔です」とアーダーンは言いました。

「いずれも素敵な夏を提供してくれるでしょう」とガワーは言いました。

 

ジュディス・コリンズ党首(右)とジャシンダ・アーダーン首相(左)

 

ニュージーランドは、11月3日の米国大統領選挙の投票日の2週間前、10月17日に総選挙に向かいます。

アーダーンの率いる労働党連立政権は、在任中に執拗に暴走行為を繰り返した少年レーサーの車を「粉砕する」と脅迫したことで「クラッシャー」というニックネームを獲得したコリンズ元法務大臣が主導する国民党に対して2期目の任期を争っています。

 

ニュージーランドでも討論の間、いくつかの衝突がありました。

早い段階で、両方の女性はコロナウイルスの封鎖のタイミングについて意見が一致せず、アーダーンとコリンズはお互いに割り込みました。

「ジュディス、ステージではもう少し良い振る舞いをすることはできませんか?」アーダーンは、最初の中断の後に尋ねました。

 

議論が個人的なものになることはめったにありませんでした。

時には冗談を言ったり、ニュージーランドの病気の根絶を維持するための厳格なコロナウイルス予防策など、いくつかの深刻な問題については合意したりもしました。

 

番組中にアーダーンの「人柄」について説明するよう求められたとき、コリンズは「彼女は善意を持っており、非常に優れたコミュニケーターだと思う」と語りました。

相手を「うそつき」だの「道化師」と呼んだり、敵の家族を嘲笑したりすることはありませんでした。

トランプ大統領と民主党のバイデン候補の間の最初の米国大統領選挙討論会とは、比較するのも馬鹿馬鹿しいほどに際立っていました。

CNNのニュースキャスターであるジェイク・タッパーは自身の番組内でこの日の討論会を振り返った時、まるで汚物を眺めるような表情を満面に浮かべて「ごみ箱の中の熱い混乱」と表現しました。

 

火曜日の夜の米国大統領選挙討論会をきっかけに、アーダーンとコリンズが討論の舞台に立つ前でさえ、米国のユーザーから「ニュージーランドへの移動」のグーグル検索が急増しました。

いくつかの世論調査では、コロナウイルスの封じ込めに成功したこともあって、アーダーンが確実な勝利を収めるであろうと見做されています。

 

 

米国政府はパンデミックを抑えるのに苦労しており、9月の時点でCovid-19による死者は20万人を超えていますが、ニュージーランドは国境内のウイルスを多かれ少なかれ根絶しています。

ニュージーランドが8月にコロナウイルスの新たなクラスターを引き起こし、8月12日の時点で過去24時間で19件の感染数にまで上昇したとき、トランプ大統領は米国の感染対策を自画自賛するために、この島国が「感染者の大規模な急増」を起こしていると記者団に語ったことがありました。

「それは本当に悲惨だ」と彼は言いました。

 

アーダーンは当時、ニュージーランドの小規模なクラスターと「米国で毎日のように見られる数万人の症例」とを比較する気はなかったと述べています。

「なぜなら、この国の人々が私たちのステータスを誤解することなど、少しも心配していないからです」と彼女は言いました。

 

CNN

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