火曜日、トランプ大統領は「大統領選挙で自分が勝利する日まで景気刺激策の交渉をしない」と宣言しました。
この宣言は株式市場に衝撃をもたらし、株価を下落させただけでなく、ベテランの記者を驚かせ、口を開いたままにさせました。
この動きは経済的にも政治的にも馬鹿げています。
トランプの発表より前に、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・H・パウエル議長は「金融政策と財政政策が、明らかに森の外に出るまで、経済を支援するために協力し続けるならば、回復はより強く、より速く動くでしょう」と発言しました。
トランプとは異なり、彼は人間の苦しみを理解できたようです。
パウエルは「支援が少なすぎると、回復が弱くなり、家計や企業に不必要な困難が生じるでしょう。時間の経過とともに、家計の破産や破産が増加し、経済の生産能力を損ない、賃金の伸びを抑えるでしょう」と述べました。
彼はまた「今のところ、やり過ぎのリスクは小さいようです。追加景気対策の措置が最終的に必要以上に大きかったことが判明したとしても、それらが無駄になることはありません」とも述べています。
下院議長のナンシー・ペロシ(カリフォルニア州)はトランプ大統領に対し「彼は自分自身の名前が小切手に印刷されていない限り、私たちのヒーロー(医療従事者、救急救命士、衛生・輸送・食品の各従事者、教師、その他)に対する財政援助を拒否しました」と述べて痛烈に批判しました。
彼女はホワイトハウスが「完全に発狂した」ことを高らかに宣言しました。
トランプは、猛烈な勢いでツイートを連発し、交渉が破綻した全責任はペロシ下院議長にあると主張しました。
彼は、自分は1兆6000億ドル規模の財政支援策を提示したものの、ペロシは「それでは不十分だ」としてこれを拒否したと述べ「彼女は誠意を持って交渉に臨んでいない」と非難しました。
トランプはペロシが「経済状態が悪く、犯罪率の高い、民主党が地盤とする州を救済するために大金を要求しているのだ」とツイートし、更に加えて「彼らの要求を拒否する。私はこの国の未来を見据えている」とも述べました。
彼が入院中に服用した薬「デキサメタゾン」には精神に作用する副作用があり、それが彼の正常な思考を妨げていると推測する人もいますが、実際、この種の反抗的で自己破壊的な行動は彼の大統領としての特徴でした。
彼がウイルスを真剣に受け止め、マスクの着用を支持者に訴えたと想像してみてください。
彼が地方政府と州政府を支援し、テストし、追跡し、隔離プログラムの指揮を執り、州が早期に経済を再開するように仕向けたと想像してみてください。
彼は危機管理の第一人者として称賛されたかもしれません。
代わりに、今や彼自身がスプレッダーであり、すでに苦戦している経済を更に苦しめたフーバーのような人物(注1)として非難されています。
そしてさらに注目すべきことは、上院共和党議員は自らの「政治的死のスパイラル」から身を守るための神経と賢さを欠いています。
トランプが共和党を破壊し、失われたとしても、彼は何も変わらず平然とそこに立っていることでしょう。
コラムニスト :ジェニファー・ルビンのコラムから抜粋
The Washington Post
注1)ハーバート・フーバー: 第31代アメリカ合衆国大統領。世界恐慌の最中に大統領に就任、有効な対策を打ち出せず、米国経済を更に悪化・深刻化させた人物として評価されている。4年後の大統領選挙でフランクリン・ルーズベルトに歴史的な大差で敗北した。ただし無能な人物だったという評価には反論も多い。