東京オリンピックの開幕まで残り3カ月を切る中、国際オリンピック委員会(IOC)は、新型コロナウイルスのパンデミック下でも安全にオリンピックを開催できる証拠として、最近の各種スポーツ大会の開催状況を挙げています。
IOCのトーマス・バッハ会長は先週の記者会見で「オーガスタで開かれたマスターズ・トーナメントを見て欲しい」と発言しました。
同ゴルフトーナメントが「問題なく」行われ、松山英樹選手が日本人初の優勝者になったことを指摘したのです。
ですが、マスターズ選手権には23カ国のゴルファー計88人が出場しました。
それは、1つのスポーツの中の1つのトーナメントに過ぎず、しかもその形態上、もともとソーシャルディスタンスが確保されています。
7月23日に開幕予定の東京オリンピックは、200以上の国と地域から、約1万1000人のアスリートが参加し、2週間半の期間に33競技339種目が実施されるという巨大イベントです。
新型コロナのパンデミック下で開かれたスポーツ大会としては、オリンピックに匹敵する規模やそれに近い規模のものさえありません。
コロナ下のイベントの安全な開催に寄与してきた一部の疫学者は、五輪でも同じ手順を再現することは可能かもしれないと語っています。
ただし、参加者全員がワクチン接種を受けていることが条件であるとしています。
ですが、オリンピックの主催者は、この条件を満たそうとしていません。
IOCは、オリンピックの参加条件としてワクチン接種を求めないとしており、日本の選手もまだ接種を受けてはいません。
疫学者らは、ワクチン接種を条件に加えさえすれば、五輪のような大規模な大会でも、主催者の対応が可能だとしています。
トロント大学の感染症専門家アイザック・ボゴシュ氏は「ワクチン接種が条件に加えられれば、安全性が大幅に高まります。これまでのイベントでわれわれが見てきた何千人という規模ではなく、現在何万人、何十万人もの人々の安全確保を目指している関係者にとって、対応の余地が拡大すると言えるでしょう」と述べています。
同氏は、北米プロアイスホッケーリーグのコロナ下での最初のシーズンに、NHL選手協会のコンサルタントを務めた人物です。
「公衆衛生資源を奪い取ってはならないし、地元コミュニティーに影響を及ぼすような集団感染を引き起こしてもならない」とボゴシュ氏は付け加えました。
「参加者全員が完全にワクチン接種を終えていたとしても、小さな感染事例は起きるかもしれません」
「ですが、それが拡散することはないでしょう」
開催国である日本からは、500人前後の選手が競技に参加するとみられています。
日本の総人口のうち、ワクチン接種を完全に終えた人の比率はわずか約1%に過ぎません。
東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は先週、組織委員会は選手への優先的接種を求めていないと述べました。
一方、日本の感染者数は増加しており、菅義偉首相は23日、東京とその他の3府県を対象に緊急事態宣言を発令することを決めました。
これは5月初旬までの連休を控え、感染者数の急増を抑えることが狙いとみられています。
大会組織委員会の広報担当者は「丹念かつ包括的な予防・制御対策を行い、全参加者からの十分な協力とサポートがありさえすれば、東京オリンピック2020大会は、全ての人々にとって安全かつ安心なものになるだろう」とコメントしました。
大会組織委員会はウォール・ストリート・ジャーナルに宛てた文書で「ワクチンは利用可能な多くのツールの1つにすぎず、東京2020大会はワクチン接種が可能な人についてはその選択肢を選ぶことを奨励します」と述べました。
「しかし、われわれはワクチン接種の状況にかかわらず、選手、関係者、スタッフ、利害関係者と地元住民の安全を確保するため、考え得る全ての方策を講じます」
「この中には、厳格な入国制限措置、検査、接触者追跡、物理的距離の確保、行動規範の順守が含まれます」
「加えて、参加者は事前に登録した活動計画に従わなければなりません」
「それは個々の参加者が、日本国内での活動や移動について、何をどこでいつどのように行うかを事前に登録するというものです」
対応策のリストには、コロナ下で行われるスポーツ向けの主要なコンセプトが含まれています。
しかし、これまでに行われたイベントには、特別の資源ないし特別の場所、あるいはその両方が用意されていました。
世界中から東京にやって来る数万人を対象に、完全かつ簡単に再現できる方策はひとつもないように思えます。
「おそらくそれは、指数関数的に複雑になるでしょう」
国際競泳リーグ(ISL)の創設者であるコンスタンチン・グリゴリシン氏はそのように述べています。
ISLは開催地をブダペストのドナウ川に浮かぶ島に設定することで、選手320人とコーチや関係者、サポートスタッフら約280人が参加する6週間の大会を実現させました。
NHLは、カナダのトロントとエドモントンで選手やリーグ関係者を封じ込める措置を講じました。
選手1452人と関係者は自宅に隔離され、移動前には48時間あけた最低2回の検査で陰性であることを確認させました。
移動はプライベートな手段で行うことが多く、到着後は部屋で再び隔離となりました。
NHLはまた、選手とスタッフの検査を毎日実施しました。
米プロバスケットボール協会(NBA)も同様のことを行い、フロリダ州で1500人強の封じ込めを実行しました。
米プロフットボールリーグ(NFL)は、選手とスタッフら約6000人に接触追跡装置を装着させ、集団感染を防ぐため、感染して隔離する必要がある人が出た場合に、接触者をすぐに割り出せるようにしました。
東京大会の組織委員会は最新の大会運営計画に関する、より詳細な内容を発表しました。
今のところ、明らかに利用できる手段は厳格な規制措置しかありません。
大会組織委員会の広報担当者は「行動規範を順守しない参加者は、究極的には資格認定証を失い、それに伴って競技に参加する権利を失う可能性がある」と述べました。
大会参加者にとって、他者との距離を保ちながら日本に渡航し、オリンピック選手村に入る方法は限られています。
そして選手村はあまり大きくはありません。
選手が宿泊先と競技会場を行き来する際などに距離を保つことが困難な場合、マスクの着用でそれを補うことが出来るかもしれません。
しかし、食事の時間は大きな課題となるでしょう。
大会規模を縮小する余地も限られています。
2012年のロンドン五輪でボランティア・人材訓練の担当者だったフィル・シャーウッド氏によれば、大都市での夏季大会では平均約30万人が資格認定証を持つ必要があると述べています。
シャーウッド氏は、東京大会では認定証を持つ人が約10万人前後になる可能性があるとみています。
この推計人数は対象競技も参加国も減らないこと、および無観客であることを前提としているとのことです。
仮に国内の観客を一部認めた場合、追加の警備担当者や運営スタッフが必要となり、その数は10万人よりも拡大するとみられています。
大会組織委員会は既に、海外からの観客は受け入れないと発表しています。
ジャーナリストは取材可能となる公算が大きいようです。
ただし、競技直後の選手を取材する「ミックスゾーン」に入れるのはカメラマンだけに限定し、それ以外の報道関係者はズームによるリモート取材とするよう要請されています。
観客がいても、いなくても、実際の競技を行うために必要なスタッフの数はあまり変わらないのが現実のようです。
コロナ下で開催された他のスポーツイベントと同様に、レフェリーやジャッジが通常よりも多くの試合で活動することで、ある程度は人員を抑制することは可能でしょう。
しかし、こうしたイベントを開催した経験のある関係者によれば、新型コロナ感染対策の規定を十分に順守するには、やはり通常より多くの運営スタッフが必要なようです。
The Wall Street Journal:2021年4月30日
WSJの読者投稿欄に『日本は先進国なのに、どうしてワクチンの接種率が1パーセントと低いのだろう?』との意見が書き込まれていました。
それに関して数人の読者が各々の見解を示していましたが、ある人物が『日本人は欧米人に比べると肥満者が少ないので、重篤化するリスクが低いからでは無いか?』との意見を述べていました。
一理あるような、無いような💦
原題:Tokyo Olympics Say They Can Be Held Safely. Experts Say They Need Vaccines.
引用:https://www.wsj.com/articles/tokyo-olympics-vaccines-pandemic-11619445969
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