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アフター・コロナ:存在感を増していくベトナム

by 黒岩留衣
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世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルスは各国の経済活動に顕著な悪影響を及ぼし、多くの犠牲者も出しています。
再三、ご紹介しているブラジルなどは、ついに24時間当たりの新規感染者が3万5千人を突破、累計では95万人を超えて100万人の大台を伺う勢いです。(参照:ブラジル、24時間で3万5千人が感染:AFP)[注1]

 

これに対して東アジア諸国では、はっきりした理由は不明ながら、コロナウイルスに感染する人の数は欧米と比較すると文字通り『桁違い』に少なく、本当に同種のウイルスなのか?と疑問を感じるほどです。

 

そんな中、台湾や香港などと並び、感染者が少ないことで知られているのがベトナムです。

ロイター通信によれば、6月16日時点での総感染者数はわずか334人、死者はゼロです。

ベトナムは各国の経済成長率が軒並み大きく落ち込む中で、唯一とも言っていいほどにプラス成長を見込んでいる国です。

 

グエン・スアン・フック首相は、今年の成長率について5%の目標を掲げているそうです。

昨年実績の7%には届かないものの、コロナ感染の下では野心的な数字といえるでしょう。(参照:ベトナムが脱コロナ一人勝ち:ロイター通信

 

これまで安価で貪欲な労働力を背景にして『世界の工場』を自認していた中国は、新型コロナウイルスの初期対応を巡って、アメリカを始め西側先進国との溝を深めており、来たるべきアフター・コロナの時代には西側先進国市場の中心に中国を据えるのは難しくなるでしょう。(参照:トランプ氏、中国との関係断絶に再び言及:日本経済新聞

 

他方、中国と同じように多くの人口を抱え、潜在的に巨大な消費市場を抱えるインドも、現存する階級差別がボトルネックになる可能性が指摘されています。

(参照:殺された理由は身分の高い人の前で食事をしたから:BBC

こうした情勢の中、ベトナムは中国に代わる新たな投資先として存在感を増していくと思われます。

 

 

さて、私の住む田舎町には二人のベトナム人の若者が住んでいます。

二人とも去年の夏に20歳になったばかりで、笑うとまだ少年のあどけなさが残る年頃です。

彼らは勤務先の食品加工業者から、お寿司屋さんの離れを借り上げてもらって住んでおり、私はこのお寿司屋さんの女将さんと懇意にしていることから、彼らとは縁があります。

来日当初は日本語は片言しか喋れなかったはずなのに、今では日常会話は十分に対応できるほどに達者になりました。

 

城下,公園の桜

去年の春、日本の桜が見たいと彼らが言い出したので、車を出して30キロほど離れた地元のお城の公園に連れて行ったことがありました。

彼らが非常に喜んで「弁当を作ってくる」と言い出した時には、内心で「この二人に料理は無理だろう」と思い、辞退しようと努力したのですが、「大丈夫ね、心配ないね」と押し切られてしまいました。

 

お城の庭先の一角にある大きめの東屋で、薄桃色の桜の花々を眺めながら、彼らの持ってきたお弁当を広げたときには驚いたものです。

なんと、そこにあるのは寿司でした。

「どうしたの?」と聞くと「刺身は近所のスーパーで買った」「すし飯は女将さんに分けてもらって、作り方も教わった」と笑顔で言います。

おそるおそる口にすると、これが意外なことに『旨かった』のでした。

上機嫌になった私が「お前ら、国に帰ったら寿司屋になれるぜ」と褒めると「寿司屋?いいね、いいね」と屈託なく笑うのでした。

 

それから持参したビール(私は運転手なので烏龍茶)で乾杯し、盛り上がると、彼らは楽しげにベトナムの歌を歌い出します。

おもてなしの心というものは、何も日本の専売特許ではなかったようです。

 


 

[注1]6月19日、ブラジルは過去24時間で5万4千人の新規感染者を報告。総感染者数が100万人を突破する地球上で2番目の国になりました。(参照:CNN

 

 

 

 

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