なぜ日本ではCovid-19で亡くなった人が少ないのか?
それは『日本人のマナー』から『優れた免疫力を持っている』という主張まで、数十の仮説を生み出した不可解な疑問である。
日本はCovid-19の死亡率が世界で最も低いというわけではなく、この地域では、韓国、台湾、香港、ベトナムはすべて日本より死亡率が低い。
しかし、4月に東京で約1,000人の「過剰死」が見られたにもかかわらず、全体としては2019年の総死者数より、むしろ減少する可能性さえある。
新型ウイルスが広まるにつれ、COVID-19の様々な特徴が明らかになっていった。
主に高齢者の命を奪うこと、人ごみや長時間の濃厚接触で感染リスクが大幅に上がることなどだ。
それらを考慮すると、日本は人口に占める高齢者の割合が世界一高い。
また、都市の人口密度も高く、東京圏の人口は実に3700万人にも上り、その大多数にとっての主な移動手段といえば、恐ろしいほどの過密状態で知られる悪名高き電車である。
加えて日本は「テスト、テスト、テスト」という世界保健機関(WHO)の助言にも聞く耳を持たなかった。
PCR検査を受けたのは、今になってもわずか34万8000人ほどで、人口の0.27%でしかない。
日本はCovid-19に対して脆弱性を示すはずの多くの条件を揃えているにもかかわらず(これは特に印象的だが)近隣諸国の一部が行ったウイルスへの取り組みのような精力的なアプローチを採用したことがない。
日本は、欧州のような規模の厳密なロックダウン(都市封鎖)を実施してこなかった。
政府は4月上旬、緊急事態宣言を出したが、自宅待機の要請は『任意』だった。
これまでCOVID-19対応のお手本とされてきたニュージーランドやベトナムなどは、国境封鎖や厳しいロックダウン、大規模な検査、厳格な隔離といった強硬手段を取ってきた。
しかし、日本はそのどれも行っていない。
それでも、国内初のCOVID-19患者が報告されてから5カ月がたち、日本で確認された感染者は2万人に満たず、死者は1000人を下回っている。
今や緊急事態宣言は解除され、生活は平常に戻りつつある。
日本はどうやったのか?
麻生太郎副首相は、他国の指導者から日本の成功について説明するよう求められた時「日本人の『上質』な国民性によるものだ」と答えたと言う。
麻生氏は、いわゆるこのMIN-DO(単純に訳せば『国民的意識水準』と言う意味になる)発言で、マスコミや野党に叩かれ、言葉を失い、沈黙を強いられた。
だが多くの日本人と、少なくない科学者らは「日本はどこか違う」と考えているのは間違いない。
いわゆる「X因子(ファクターX)」が国民をCOVID-19から守っているのだと。
しかし、3月中旬になると、東京で感染者が急増し始めた。
ロンドンやニューヨークなどと同じように、東京でも感染者が指数関数的に増えるかと誰もが思った。
ところが、この時点で日本人は賢く行動した。
あるいは運が良かっただけかもしれない。
そのどちらだったのかは、まだ定かではない。
英国キングス・カレッジ・ロンドン公衆衛生研究所長の渋谷健司教授は言う。
「結局はタイミングの問題だった」
「コロンビア大学による最近の研究は、ニューヨークが2週間前にロックダウン措置を実施していれば、それが何万人もの人々の死を防いだであろうことを示唆している」と渋谷教授は述べている。
彼によれば「X因子」など存在しないという。
「日本にとって大事なことは、他の国にとっても同じく大事なことです。いかに感染の連鎖を断ち切るかだ」
「日本人の『公共意識の高さ』が本当の意味での封鎖効果をもたらしたようだ。日本人は厳格な行政命令ではなかったにもかかわらず、皆がこれを遵守した」
渋谷教授の意見が正しいのだとしたら、他国が日本を参考にするのは難しいのかもしれない。
そう考えると麻生氏の『MIN-DO』発言も、そうそう間違った発言では無かったように聞こえてくる。
(参照:BBC)