ロシアの野党党首、アレクセイ・ナヴァルニー氏を治療しているベルリンのシャリテー医科大学病院は、検査の結果、彼が薬物中毒になったことを確認したと発表しました。
ベルリンの病院の医師団は、クレムリンの批評家が『コリンエステラーゼ阻害剤グループの中のいずれかの物質による薬物中毒』によって苦しんでいると指摘しました。
土曜日の朝、シベリアのオムスク市からドイツの首都ベルリンに移送されたナヴァルニー氏は、集中治療室にあり、昏睡状態にあると付け加えました。
「彼の健康状態は深刻ですが、現在彼の生命に特別な危険はありません」と病院は月曜日に声明で述べました。
病院によると、ナヴァルニー氏を毒殺するために使用された薬物はまだ特定されてはいません。
コリンエステラーゼ阻害剤は認知症治療薬として広く使用されています。
一方で、それらはまた、サリンやノビチョクを含む化学兵器の神経ガスにも含まれており、英国イングランド南西部ソールズベリーで2018年3月に起きた元二重スパイのロシア人男性セルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんの毒殺未遂事件では兵器級の神経剤ノビチョクが使われました。
この事件では巻き添えで市民と警察官3人が死傷しました。
BBCはこの2件の事件について、幾つかの不気味な共通点が見られると指摘しています。
EU最高の外交官であるジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表は、月曜日の夜に発表された声明で、この事件への徹底的な調査を要求すると述べました。
「欧州連合は、ナヴァルニー氏に対する暗殺の試みのように見えるものを強く非難する。ロシア当局がナヴァルニー氏の中毒に関する独立した透明な調査を遅滞なく開始すべきことは不可避である」とボレル上級代表は声明を発表しました。
更に彼は続けて「ロシアの人々と国際社会は、ナヴァルニー氏に対する毒攻撃の背後にある真実を要求している。それらの責任者は責任を問われるべきである」と述べました。
アンゲラ・メルケル首相の報道官ステフェン・セイバートは月曜日の記者会見でジャーナリストに対し「彼は毒攻撃を受けた可能性が高く、ゆえに特別な保護が必要である」と述べました。
「ナヴァルニー氏が自ら服毒したとは考えられず、何者かがナヴァルニー氏を毒殺しようとしたという強い疑惑があります。そして残念なことに、最近のロシアの歴史にはそのような毒物中毒の例が1つ2つあります」とセイバートは付け加えました。
金曜日に、最初にナヴァルニー氏を治療していたロシアの病院は、彼が毒攻撃を受けたという主張を否定しました。
彼の妻は、この医者団を信頼できないと主張しています。
当初、ナヴァルニー氏が治療を受けていたロシアの病院の副主任医師であるアナトリー・カリニチェンコ医師は記者会見で、ナヴァルニー氏の血液や尿に毒物は検出されなかったと述べました。
「私は患者が薬物中毒を患ったなどとは信じていない」
米国を拠点とする麻酔科医コンスタンチン・バロノフ博士は「その主張は、どんなに控えめに言っても奇妙なことだ」と語りました。
なぜならばロシアの医師団はナヴァルニー氏に対し『アトロピン』を投与していたことが明らかになったからです。
「彼らはそれがコリンエステラーゼ阻害剤グループの毒素であると結論付けたに違いない」
「そうでなければ、そのような治療をするはずがないからだ」
ロンドン大学ユニバーシティカレッジの無機化学の教授であるアンドレア・ セラ教授は、コリンエステラーゼ阻害剤は殺虫剤の2つのカテゴリーである有機リン酸塩とカルバメートで広く使用されていると説明しました。
「有機リン系殺虫剤の中毒は、農民がそれらを誤って吸引する場合があるため、世界中で一般的です。しかし、一部の有機リン酸塩は殺虫剤よりもはるかに有毒であり、サリン、VX、ノビチョックなどの軍事目的で使用されています」と彼は述べました。
コリンエステラーゼ阻害剤は、神経系の伝導に関与する働きのある重要な酵素、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の代わりに作用します。
「阻害剤は酵素があるべき場所と同じ場所に付着し、酵素は不可逆的に阻害されます」とセラ教授は述べました。
ベルリンのシャリテー医科大学病院は月曜日の声明で、ナヴァルニー氏はアトロピンによって治療されていると述べました。
アトロピンはサリン等の神経系に作用する化学兵器(神経剤)に対して解毒剤として使用される場合があります。
長年にわたってナヴァルニー氏の親友であり、盟友でもあったレオニード・ボルコフ氏は過去に何度も悪夢に悩まされたことがあると言いました。
「誰かが私に電話をかけ『アレクセイが暗殺された』と告げる夢です」
先週、彼の悪夢はあやうく現実になるところでした。
早朝の電話で彼はナヴァルニー氏がシベリアのトムスク市からの飛行中に倒れ、昏睡状態にあると告げられました。
彼は、この瞬間を予期していても、現実を容易に処理することが出来なかったと言います。
ヴォルコフ氏はドイツのNGO「映画平和財団」と共に、近くの空港で救急航空機を待機させましたが、ロシアの医師団はナヴァルニー氏は重篤であり移送は出来ないと一度は拒否しました。
ナヴァルニー氏の盟友は、遅延は故意であり、彼の体内の毒物を検出不可能にすることを意図していたと信じています。
「私が現時点で持っている情報に基づいて、私はそれがクレムリンまたはクレムリンの一部が関与していると強く信じています」
「現時点では、プーチンがそれを命令したという証拠はありません。しかし、彼らが使用した毒物は、近所のドラッグストアで購入できるような類のものではないのです」と彼は述べました。
参照:以下の記事を再編集して投稿しました
Russian opposition leader Alexey Navalny was poisoned, Berlin hospital says:CNN
Suspected poisoning of Putin critic was meant to kill him, not to scare him off, chief aide says:CNN
Navalny and Russia’s arsenal of exotic poisons:BBC
実はこの記事は3日ほど前に書き上げていた記事でしたが、アメリカを襲ったハリケーン・ローラに関する投稿と差し替えたため、後回しになってしまいました。
そのため記事の鮮度が若干落ちてしまった感がありますことをお詫びいたします。
先に投稿しました関連記事と併せて御一読いただけますと幸いです。
いつものことながら、長すぎて申し訳ありません。