トランプ大統領は、彼が何年にもわたって連邦税を回避し、4億ドル以上の借金を抱えており、彼の事業を不安定にする可能性があるという忌々しい報道に起因する攻撃と戦うため、ジョー・バイデンとの最初の討論会に向かいます。
火曜日の夜に2人の候補者が最初に会うことで、国と主要な州の両方の支持率で劣勢を挽回することを期待するトランプの選挙陣営にとって、トランプの租税回避戦略を報道したニューヨークタイムズのレポートは、彼の再選を狙うための継続的な努力を妨げる最新の障害になりました。
税務記録を非公開にするために執拗に戦ってきたトランプにとって、2016年と2017年に再び750ドルしか連邦所得税を支払わなかったことを示す報道は「世界的実業家」および「アメリカファーストの愛国者」としての彼の作られたイメージに深刻な危機をもたらしました。
「2016年の選挙時と同じように、フェイクニュースメディアは、違法に入手した情報と悪辣な意図で、あらゆるナンセンスを作り上げています」とトランプ氏は反論しました。
ニューヨークタイムズのレポートを「でっちあげ」と宣言した翌日の月曜日にはツイッターに 「私は何百万ドルもの税金を支払いましたが、他の人々と同じように、減価償却と税額控除を受ける権利がありました」と書き込んでいます。
討論会の準備のために月曜日を世間の目から離れて過ごしたバイデン候補は、彼のキャンペーンを使用して、トランプの納税額と中流階級のアメリカ人が毎年支払う納税額とを比較するデジタル広告を放送しました。
この広告は、教師、消防士、看護師などの職業の典型的な所得税負担を示していました。
「あなたはトランプ大統領よりもいくら多くの税金を払いましたか?」
トランプ氏は以前、租税回避戦略を擁護しており、2016年には「賢い」とまで述べています。
共和党全国委員会の元報道官であるダグ・ヘイ氏は、トランプ氏は巨額の損失を示す税務記録と、比類のない洞察眼を備えた世界的大実業家という自己評価との明らかな矛盾に対処することを余儀なくされるだろうと述べました。
「それはどちらのドナルド・トランプが本当のドナルド・トランプであるか?という問いです」
「IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)に嘘をついている狡賢な大金持ちか?それとも、アメリカ人に嘘をついている失敗した実業家か?」と2016年の選挙時にトランプに1票を投じなかったヘイ氏は言いました。
報道は、トランプがヘアスタイリストのために支払った70,000ドル以上や、家族に支払われたコンサルティング料の数十万ドルを含む多額の疑わしい費用を差し引くことによって彼の納税額を事実上ゼロにしたことを発見しました。
トランプのゴルフコースとホテル事業は着実に赤字を出しており、大統領は今後数年間で期限が来る4億ドル以上のローンと借金を抱えています。
米国の情報機関であるCIAの内部査察チームは、潜在的な脆弱性の兆候を事前に把握するために職員の財務記録を絶えず精査しているといいます。
借金の額の多さ、海外絡みの取引、収入の隠れた流れ、そして暴露を避けるための秘密や欺瞞の傾向といった項目がチェックされています。
ニューヨークタイムズの暴露に基づく記録は、トランプが在職中に外国投資とプロジェクトから多額のお金を稼ぎ続けていることを示唆しています。
そして、そうした多額の収入にもかかわらず、彼は何億ドルもの借金を抱えており、多額の支払いが必要であることも示されています。
「国家安全保障の観点から言えば、それはとんでもない脆弱性です」と元CIAの参謀長を務めていたラリー・ファイファーは言いました。
現在ジョージメイソン大学のヘイデンインテリジェンスセンターの所長を務めているファイファー氏は、仮に彼自身がトランプ氏の経済的負担のほんの一部にすら直面していれば「私の許可が取り消されたであろうことは間違いない」と述べました。
報道による開示は、トランプの立場が、彼が一般大衆に信じ込ませたよりも遥かに不安定であり、潜在的な破綻危機を回避するために、今後数年間でかなりの額の現金注入の必要性に直面していることを示しています。
その結果、当局者や専門家は、トランプは彼の経済的苦境を十分に把握している外国政府による操作に対して脆弱になり、彼の経済的利益と国家としての利益が相反する場面に身を置かれる可能性があると指摘しました。
下院議長のナンシー・ペロシ(カリフォルニア州)は、トランプが国家の安全を危険にさらしたと非難しました。
「この大統領は4億ドル以上の借金を抱えているようです」とペロシはNBCのテレビインタビューで語りました。
「誰に?あるいはどこの国に?」
「トランプが負債を抱えている人々、または国々は彼の弱みを握っていることになるのかも知れません」
「私にとって、これは国家安全保障上の疑念です」と彼女は言いました。
ホワイトハウスで国家安全保障会議のロシア副局長を務めたアナリストのジェフリー・エドモンズ氏は「潜在的なセキュリティリスクの本当の指標となるものは脆弱性それ自体というよりは、むしろその隠蔽にある」と述べました。
「そのようなものを隠そうとすればするほど、事態はより深刻なものになります」
税務記録は、外国の独裁者に対するトランプの行動を観察するための新しい視点を提供します。
ロシアのウラジーミール・プーチン大統領を批判することへのトランプの拒否は、国家安全保障当局を特に困惑させてきました。
トランプは2016年の選挙でロシアの干渉の証拠を却下し、ロシアがアフガニスタンの軍隊に米兵を標的に報奨金を支払ったという報告を軽視し、今月はロシアの反体制政治活動家の毒殺未遂疑惑に関する質問にさえ取り組むことを拒否しました。
税務ファイルは、トランプがモスクワのトランプタワー建設事業交渉を通じて、2013年のミスユニバースページェントから少なくとも230万ドルを稼いだことを示しています。
トランプは、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が、数千人を殺害し、国務省によって非難された麻薬の取り締まりで「信じられないほどの素晴らしい仕事」をしたと称賛しました。
税務ファイルは、トランプが10年前にマニラタワーに彼の名前をライセンスした後に数百万ドルを稼いだことを示しています。
トランプはジャーナリストのボブ・ウッドワードに、サウジの王子がワシントン・ポスト紙の寄稿コラムニストであるジャマル・カショギ氏の殺害に加担しているとCIAが結論付けた後、サウジの王子モハメッド・ビン・サルマンを米国からの深刻な影響から「救った」と自慢しました。
サウジアラビアの資金提供を受けたロビイストは、2016年の選挙から1か月以内にトランプのワシントンホテルで推定500泊分の料金を支払ったことが明らかになっています。
当局者は大統領の有する権限により、米国の諜報機関や国家安全保障当局が、安全保障上のリスクを最小限に抑えるための措置を講じることが困難になるだろうと述べました。
「私の推測では、トランプ大統領に提供される情報は、歴代の大統領よりも少ないかもしれません」とファイファー氏は述べています。
「しかし大統領は、彼に与えられた権限と彼が国民によって選出されたという事実により、いかなる機密情報にもアクセスできます」
「ゼロにすることはできません」
以下の記事を参照して編集しました。
Report on Trump’s tax avoidance shakes up presidential race ahead of Tuesday night’s debate:The Washington Post
Trump’s debts and foreign deals pose security risks, former intelligence officials say:The Washington Post
日本でも政治献金と政治腐敗の報道は絶えることなく耳に届けられていますが、それが国家の安全保障上の危機につながるという話はあまり聞いたことがありません。
米国の場合は、単なる政治スキャンダルにとどまらず、それが国際的な影響を持つ安全保障上のリスクになるのだということを今回、改めて知らされました。
ところでアメリカにはこんな諺がありますのでご紹介します。
Fool me once, shame on you; fool me twice, shame on me.
(君が僕を一度だけ騙したのなら、それは君の恥だ。でも君が僕を二度騙したのなら、それは僕の恥だ)
管理者:黒岩留衣