日本の新首相はモバイル通信最大手を巡る国内過去最大の株式公開買い付け(テイク・オーバー・ビット:TOB)を通じ、電気通信市場の改革を遂行できる可能性があります。
ライバル会社の株主は他をローミングすることを考えた方がいいかもしれません。
NTTは29日、上場子会社で日本のモバイル通信最大手であるNTTドコモを非公開化すると発表しました。
同社はドコモ株66%を保有しており、未保有株の買い付けに約4兆円を投じるとのことです。
取得価格は28日の終値に41%のプレミアムを上乗せした水準で、ディールロジックによると日本企業のTOBとしては過去最大となります。
ドコモ株は29日の取引でストップ高の前日比18.5%高と急騰しました。
両社ともこの日配当権利落ちを迎えたこともあり、NTTは0.7%下落しました。
NTTドコモのライバルであるKDDIとソフトバンクは同日の取引で下落しました。
日本政府はNTT株のおよそ3割を保有しており、菅義偉首相が長年目指してきた携帯通信料金の引き下げがドコモの完全子会社化によって一段と容易になるとの懸念が売り材料となりました。
安倍前首相が辞任の意向を固めたことが先月伝わって以降、28日の取引終了時点までにモバイル通信上位3社の株価は平均13%下落しています。
菅氏は官房長官だった2018年、日本のモバイル通信業者は携帯料金を4割引き下げるべきであると発言したことがありました。
ドコモをはじめ各社はその後に値下げに動いたものの、まだ十分ではないようです。
6月の政府調査によると、東京の携帯料金は依然としてロンドンやソウルなど海外の主要都市よりも高額です。
ドコモ、KDDI、ソフトバンクは長らく日本のモバイル通信市場を支配してきました。
国内Eコマース大手の楽天は今年、安価な料金プランでの市場参入を狙っていますが、その成否はなお不透明です。
政府は通信事業者に値下げを強いることはできませんが、NTT株を保有しているため、ドコモの決定に影響力を及ぼすことは可能です。
ましてや、完全子会社化されれば政府は少数株主に気を遣う必要もなくなります。
KDDIとソフトバンクは後に従うしかなくなるかも知れません。
ドコモの株主は予想外の棚ぼたに歓喜できる半面、ライバル社の株主はさして喜べないことでしょう。
The Wall Street Journal