討論会の前に、トランプ大統領の選挙対策顧問は彼に対し、ジョー・バイデン候補の発言の邪魔を少なくし、彼にもっと話をさせるよう促したほうが良いとアドバイスしたそうです。
バイデン候補はかねてより、失言の多い人物として知られています。
議論の終わりに向かって、トランプは彼が望んでいたものを手に入れたかもしれません。
トランプ:「石油産業を閉鎖する気ですか?」
バイデン:「はい」
トランプ:「それは重大な声明ですよ」
トランプ:「なぜあなたはそれをするのですか?」
バイデン:「時間の経過とともに再生可能エネルギーに置き換える必要があるからです。私は石油産業に連邦補助金を与えるのをやめるつもりです」
トランプ:「基本的に、彼が言っていることは、石油産業を破滅させようとしているということです」
「テキサス!今の話しを聞きましたか?」
「ペンシルベニア、オクラホマは今の彼の話を覚えていますか?」
バイデン:「彼の言い草は話の文脈から外れた発言です。私の話の要点はゼロエミッションに向けて動く必要があるということです」
石油産業の閉鎖を巡るバイデンの「YES」の意味は、彼が後に空港で記者団に対し、彼の発言内容を明確に伝えなければならないほどに十分に深刻である可能性がありました。
彼は、石油産業を完全に閉鎖するのではなく、石油産業に補助金を与えるのをやめるという意味であると述べました。
「私たちは化石燃料を取り除くつもりはありません。化石燃料への補助金を廃止するつもりです」
彼の声明は、トランプによる攻撃材料として今後も幅広く利用されていく可能性があります。
トランプは、バイデンがアメリカで最も強力な産業の1つを閉鎖することに熱心であると主張するために、それを歪める可能性があります。
バイデンにとって頭の痛い問題は、トランプという人物は認識された間違いに喜んで飛びつき、それが事実からどれほど遠くかけ離れていたとしても委細構わず、可能な限り大声で、かつ可能な限りそれらを増幅することをいとわない性格であるということです。
それは過去の民主党の主要な討論会で、バイデンが「新しい水圧破砕の許可はない」と言った出来事を彷彿とさせます。
民主党予備選挙ではよく言われていることかもしれませんが、ペンシルベニア州、オハイオ州、テキサス州などの州で水圧破砕が重要な「飯のタネ」である総選挙ではそうはいきません。
彼のキャンペーンは直後に『公有地における』新しい水圧破砕の許可を望んでいないことを明らかにしました。
これは、ほとんどの水圧破砕を継続させる立場です。
「私は水圧破砕を禁止するつもりはありません」とバイデンは数ヶ月後の9月にピッツバーグでそのように発言する必要性を感じていました。
今日まで、というよりは最後の討論会でさえ、トランプはその3月の討論から摘まみ上げた「一言」を後生大事につかんで離さず、バイデンの立場を不正確に説明しています。
「彼は水圧破砕に反対した!許可しないと言った!」とトランプは木曜日の夜に主張しました。
今、トランプはもっと強い武器を手に入れたと思っているかもしれません。
それでも、それはトランプが探し求めた金の鉱脈ではないかもしれません。
バイデンが連邦政府の助成金をやめたいと考えている化石燃料は、気候変動の主原因です。
気候変動に対するアメリカ人の不安は高いものがあります。
山火事、ハリケーン、洪水…これらはすべて、今後10年以内に行動しなければ、地球は不可逆的に壊滅的な被害を被ると科学者たちは警告を発しています。
2019年のワシントンポストとカイザーファミリー財団の世論調査では、アメリカ人の3分の2が、トランプが気候変動に対してほとんど何も対策を行っていないと述べており、約半数が今後10年間に緊急に行動が必要であると述べています。
これは、バイデンが常日頃から言っていることと一致しています。
アメリカ人の気候への懸念は、パンデミックの間もずっと続いています。
10月のピュー研究所の調査によると、有権者の68%が、誰に投票するかを決定する上で、気候変動問題が「非常に」または「ある程度」重要な要素であると述べています。
気候変動に関しては、おそらく他のどの議題よりも更にそうですが、バイデンとトランプのコントラストは際立っています。
バイデンは、2050年までにアメリカをクリーンエネルギーに移行するための気候計画をまとめあげました。
トランプは、これまでで最も気候変動対策に背を向けたの大統領の1人であり、地球環境問題を「デマ」と表現し、排出量を削減するための主要な国際協定から撤退しました。
共和党の戦略家の中には、この問題をすぐに解決しないと、党が有権者を失う可能性があることを懸念している人もいます。
しかし、地球環境問題を巡る問題意識は党派によっていくらかの隔絶があります。
そのピューの調査では、気候変動はバイデンを支持する有権者の68パーセントにとって「非常に重要」であることが示されています。
一方、トランプを支持する有権者にとっては、重要度ランキングの最下位近辺にあります。
トランプがバイデンの石油を巡るコメントで彼を非難する限り、トランプはすでに彼自身の支持者とのみ対話しているだけかもしれません。
そして、バイデンが気候変動への対処について話しているときも同じことが言えます。
The Washington Post