水曜日は「何でもアリの日(anything can happen day)」でした。
その翌日からは「何でもアリの月(anything can happen month)」が始まったかのように見えます。
開票は依然として続いており、ジョー・バイデン前副大統領は選挙で勝利を収めるかのように見えましたが、ドナルド・トランプ大統領はレースから降りてはいません。
上院は共和党の手に留まる可能性が高いように見えます。
そして、選挙前の数日間に多くの投資家を導いていた『ブルーウェーヴ(バイデン氏が決定的な勝利を収め、民主党が上院を支配し、それが就任式後の大きな景気刺激策につながる)の物語』は木っ端微塵に砕けました。
これにより、選挙の結果として投資がうまくいくか、うまくいかないかについての目算が変わります。
追加の刺激策が消費者のポケットに入れるお金の恩恵を受ける小売業者などの景気循環型企業の株は、水曜日の初めに遅れをとりました。
長期国債は2つの点で勝者でした。
第一に、大規模刺激策がなくなれば、計画される新規発行額も減ることです。
第二に、財政支援がなければ連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策を一段と緩和させる選択をするかもしれないということです。
いわゆるTINA(there is no alternative:他に手はない)トレードの結果として、より低いレートで、より刺激の少ない環境もまた、大規模なハイテク株にとってはより有利かもしれません。
しかし、多くの投資家が選挙で最も可能性の高いシナリオであると考え、そして結局はそれが起こらなかったように見えるのと同じように、みなさんが今、起こるであろうと思うシナリオもまた、たとえそれが「丁半博打」ではないにしても、そうならないかもしれないということを認識することは重要です。
水曜日に上院多数院内総務のミッチ・マコーネルは、控えめな刺激策への扉を開きましたが、それは下院民主党が目指していた規模の範囲ではなさそうです。
その間、選挙によって高められたあらゆる感情の高ぶりゆえの不確定要素はありますが、経済が抱える当面の課題は依然としてCovid-19のままです。
冬が近づくにつれ、感染数は更に増え続け、それさえなければ制限を撤回したかもしれない州や地方の役人は自制にとどまり、多くのアメリカ人は警戒を強めています。
冬の寒い天候はまた、暖かい季節にはビジネスを後押しするために活用された屋外利用の回避策さえも困難にし、レストランや他のビジネスに苦境を投げかけています。
一方、春の景気刺激策の結果として家計や企業が受け取った資金は底を尽きかけており、支払いを待つ銀行や家主の忍耐力と同様に不足しています。
火曜日の選挙がワシントンにもたらしたかもしれないあらゆる変化にもかかわらず、政治は依然として『可能性の芸術』であり続けるようです。
そして、これらの可能性は、投資家が認識しているよりもずっと狭いものです。
Election Gives TINA Fresh Legs
The Wall Street Journal
※写真は連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長
上院共和党が相変わらず多数派を維持しそうな事を、民主党の暴走を食い止める効果があると歓迎する投資家もいれば、大きな変化が必要な時代に政権の手足を縛ることになると嘆く人もいます。
「光あらば影あり」と言うことでしょうが、マーケットの過剰反応を自制させる効果があると思えば、そう悪い話ではないのではないかなあ、と根が臆病な私などは思います。
管理者 黒岩留衣