この1年は、世界と、そしてとても大勢の人たちの生活に、非常に多くの変化をもたらしました。
大人になってから、人生のほとんどを遠征で動き回っている私にとって、新型コロナウイルスのパンデミックは静けさの美しさを教えてくれました。
私たちは行動するほどに生産的になれると思わされていますが、パンデミックは必ずしもそうではないことを証明しています。
常に行動しているからといって、人生が創造的で、ポジティブな方向に向かっているわけではないということです。
渡航ができないことは、私は身体的に行動が制限されただけでなく、性格的にも大きな影響を与えたと言えます。
おかげで自分の思考と心の中を見つめ直し、新たな方法で成長することができたと思います。
比較的静かに自宅で過ごした時間がなければ、私が今認識しているような世界に気づくことはできなかったことでしょう。
私は初めて、ニュースをもっと頻繁に、そして、より深く読んだり聴いたりし、世界に影響を与えている問題を理解することができました。
テニスプレーヤーとして、常にそれができていたわけではなかったということです。
世界を飛び回っていないのに、もっと世界について知るようになったというのは皮肉なことです。
私はまた、自分の肌について、あるいは私という人間や、私の生まれについて、とても心地よさを感じていることに気づくことができました。
おかげで、関心のある問題に取り組むためには、適切なら声を上げ、はっきりと主張する自信が持てるようになりました。
そうした強さや信念が、私に常にあったわけではありません。
多くの人にとって、このコロナ禍に愛する人たちと一緒に自宅で過ごせるのはせめてもの救いとなっています。
私自身は、幸せがテニスコートの中での成功よりも外に関係していることに気づくことができました。
私生活に満足している人の多くは仕事で成功しやすいものです。
家族や友人と過ごす時間はお金で測ることは出来ません。
パンデミックは私たち皆に、そうした時間が当たり前ではないことを教えてくれています
パンデミックによる悲劇はいうまでもないことですが、ポジティブな側面もあるのです。
私の場合、優先事項をリセットして再評価し、あらゆることを総点検することができました。
私はとても野心的なので、今後もコートの中で成長を続けたいと確かに望んでいます。
ですが今では、私にとって本当の意味での成功はコートの外にあると理解しました。
世界にはまだまだ多くの癒やしが必要だと思います。
人々が愛と思いやりをもって支え合うなら、私たちは以前より強く前に進んでいけるだろうと確信しています。
大坂なおみはプロテニスプレーヤーであり、全米オープンと全豪オープンのチャンピオンです。
The Wall Street Journal:2021年3月19日
原題:Naomi Osaka on the Pandemic Year: Finding Success Off the Court
Being forced to slow down provided the chance to make new discoveries and appreciate the beauty of stillness
引用:https://www.wsj.com/articles/naomi-osaka-on-the-pandemic-year-finding-success-off-the-court-11616086695