Home 時事ニュース 「全てを失ってしまった」中国の大洪水、状況はさらに悪化

「全てを失ってしまった」中国の大洪水、状況はさらに悪化

by 黒岩留衣
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本来ならば、この時期までに、バオ・ウェンタオの家族農場で育つ米は収穫する準備ができているはずです。

代わりに、大洪水が中国南部の広大な一帯を巻き込み、19歳のバオ少年と彼の父親が住むポヤン湖周辺の村にあるおよそ36エーカー以上の水田が水没しました。

「作物は完全にダメになりました」とバオは語り、彼の家族はす​​でに 28,000ドル相当の農業生産物を失っていると付け加えました。

「洪水前に米はほぼ熟して収穫の準備ができていましたが、今ではすべてがなくなっています。」

 

洪水が急増し、先月江西省のポヤン湖のほとりを破壊し「魚と米の土地」として知られている何千エーカーもの農地を破壊しました。

バオと彼の父親のような農民にとって、この被害は壊滅的です。

降雨が、彼らが収穫しようとしていた作物を台無しにしただけでなく、洪水は秋以降に作付けすることも不可能にしました。

「土地はまだ水面下にあります」とバオは言いました。

「つまり、一年を通して収穫はありません。」

 

バオの農場と1,300万エーカー以上の農地を侵略した洪水の面積は、実にウェストバージニア州ほどの大きさであり、中国が長年経験した中でも最悪の洪水被害です。

中国の緊急管理省は、破壊された農地、道路、およびその他の資産を含めた災害の直接的な経済的損失を210億ドルと見積もっています。

バオのような農民を含む約5500万人が影響を受けています。

 

この災害は、コロナウイルスのパンデミックによりすでに脆弱な状態にある世界第2位の経済大国にとって悪いニュースです。

北京当局はこれまで、他国から大量の農産物を輸入し、戦略的備蓄から数千万トンを放出することにより、食料供給をなんとか確保することができました。

しかし、アナリストは、そのような手段が長期に渡って維持されるはずはないと警告します。

 

中国と西側諸国の多くとの緊密な関係、およびコロナウイルスのパンデミックにより、将来、多くの食品の輸入が困難になる可能性が指摘されているからです。

一方、中国の洪水はさらに悪化する可能性があります。

 

今月も大部分を通じて大雨が予想され、中国当局は洪水被害がさらに北へ北へと這い上がり、国の小麦とトウモロコシの収穫を脅かす可能性があると警告しています。

「洪水はすでに1998年以来最悪であり、今後数週間で、さらに悪化する可能性がある」と野村証券のアナリストは先月末の報告書で述べています。

政府は現在の生産状況に関する詳細なデータを発表していないため、中国の食料供給のどの程度が危険にさらされているかは完全には明らかではありません。

野村証券のアナリストによると、洪水が8月末までに封じ込められたと仮定すれば、失われた農業生産高の損失評価は17億ドルになると分析しています。

(この数値はあくまでも農作物の被害額に限ったものです:翻訳者注)

 

しかし、それはあまりにも楽観すぎる分析だったようです。

なぜならば、被害はさらに悪化する可能性があるからです。

野村証券のアナリストの分析は、中国政府が7月初旬に発表した氾濫に関するデータに基づいています。

その後、中国の緊急事態省によると、被害を受けた耕作地の面積は約2倍に膨れ上がりました。

つまりアナリストが発表した被害予測には、洪水が拡大した場合に脅かされる可能性のある小麦、トウモロコシなどの作物の大規模な損失は含まれていないことになります。

 

アナリストはすでに、トウモロコシの価格が高騰していると指摘しています。

中国のデータ会社SCIによると、中国のトウモロコシの価格は、前月と比較して1か月前より20%も高騰し、過去5年間で最悪の水準となりました。

トウモロコシは中国の養豚の飼料として使用されており、昨年発生した豚コレラの被害からの回復を目指して急ピッチで繁殖が進んでいます。

そのため洪水が始まる以前からトウモロコシの供給は厳しくなっており、更に追い討ちをかけるかのように、ヨトウムシ(夜盗蛾の幼虫)と呼ばれる害虫が中国を席巻しているという情報もあります。

 

大豆の価格も急騰しました。

中国農業農村部のデータによると、2020年前半の国内大豆価格は昨年末から約30%上昇しました。

 

中国当局が困惑しているのは明らかです。

中国の習近平国家主席は最近、吉林省北東部の農民をテレビ訪問して驚かせましたが、彼はこの地域を訪れる十分な理由があります。

中国北東部は、国の大豆の40%以上とトウモロコシの3分の1を生産しています。

これらは家畜と家禽に与えられるため、どちらも食品サプライチェーンに必要不可欠です。

 

中国は世界の他のどの国よりも多くの大豆を消費しており、トウモロコシの消費量は米国に次ぐ世界第二位です。

この地域はこれまで大洪水を免れてきましたが、今後数週間で水害が悪化した場合、状況は一変する可能性があります。

 

数千万トンの米、トウモロコシ、大豆が、ここ数カ月、国家の穀物備蓄を管理・販売する2つの機関である穀物備蓄公社と国家穀物貿易センターから市場に投入されました。

これまでのところ、政府機関は、6000万トン以上の米、約5,000万トンのトウモロコシ、および76万トンを超える大豆をすでにリリースしており、2019年全体の投入量をすでに上回っています。

 

中国は、特に米国からの輸入も増加しています。

北京は、1月に合意された米中貿易戦争の停止の一環として、数十億ドル相当のアメリカ製品を購入することを約束しました。

直近の中国の税関データによると、今年の最初の6か月で、中国は前年比21%増の約6,100万トンの穀物を輸入しました。

トウモロコシの輸入は1年前から18%増加し、大豆と小麦の購入も増加しました。

米国、ブラジル、ウクライナ、フランスが最大の貿易相手国でした。

 

しかし、中国の一部のアナリストは、中国が海外からの輸入にあまり頼りすぎてはならないと警告しています。

中国の天風証券のアナリストによると、米国当局がこれらの輸入品を遮断または大幅に課税した場合、中国の食品サプライチェーンに大きな不確実性をもたらす可能性があるといいます。

中国の最新の税関データによると、2020年前半には、米国は大豆900万トン、小麦約10万トン、トウモロコシ6万5,000トン近くを中国に輸出しており、最大の貿易相手国となっています。

 

Covid-19のパンデミックにより、一部の国では食品の輸出が一時停止されました。

天風証券のアナリストは最新の研究により、中国の食糧安全保障に対するリスクが高まっていると警告を発しています。

 

バオのような農民に関しては、中国は洪水救援のためにいくらかのお金を用意しました。

中国の財務省によると、7月中旬の時点で、洪水の影響を受けた人々の移転や家の再建などを支援するために、2億5,800万ドルの予算が割り当てられています。

しかし、それはバケツの水に等しく、大洪水がすでに与えた推定総額210億ドル相当の経済的損害と比較すれば、あまりに少額です。

 

「政府は助成金を用意していますが、それは実際にはあまり役に立たないでしょう」とバオは言いました。

彼の父親はすでに家を出て、家族を困窮から救うために他の仕事を探しているそうです。

 

(参照:CNN

 


またしても長くなってしまいました。

申し訳ありません。

今年は確かに雨の量が多く、我が家の庭先のささやかな畑も収穫できないままで終わりそうです。

 

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