短期的な経済見通しを懸念しておられる諸氏には、悪いニュースがあります。
それは「長期的な見通しはもっと悪い」ということです。
これは先週、米国議会予算局(CBO)が発表した最新の長期予算見通しから浮かび上がってきた見解です。
これには冷徹な数字が含まれていました。
当局は、今後30年間の年間経済成長率が平均でわずか1.6%(1年前の予測から約0.25ポイントの低下)にとどまり、2040年代までにはわずか1.5%になると予測しています。
米国では、1930年代以降、それほど低いトレンド成長は見られませんでした。
長引くパンデミックは、ほんの僅かしか影響を及ぼしてはいません。
そのほとんどは、より長く続く力、すなわち人口統計と、これにともなう生産性の低下を反映しています。
もちろん、すべての経済予測は本質的に過去の経験と知識に基づいた推測であり、そのような予測の根底にある仮定の多くは間違っていることが多々あります。
特に遠い将来を眺める場合なら尚更です。
特にCBOは、おそらくは起こらないであろう特定の事象をも想定する必要があります。
それでも尚、CBOは成長促進要因について今日私たちが知っているすべてのことを体系的に組み合わせ、将来についての内部的整合性を整えたストーリーにするため、依然として有用な未来演習です。
この物語は、パンデミックによって引き起こされた不況の影響を驚くほど受けていません。
CBOは、今年の急激な縮小に続いて、その後の数年間でより速い経済成長が見込まれ、結局のところ、今後10年間の成長はほとんど変わらないと予想しています。
しかし、その後の数十年で、ビジョンは次第に暗くなります。
大きな理由は、今日すでに進行中の人口動態の動きです。
最近の報告では、メリーランド大学とウェルズリー大学のエコノミストであるメリッサ・カーニーとフィリップ・レヴィンは、失業率が上がると予想通りに出生数が減少することを示す研究を引用しています。
彼らはまた、1918年のインフルエンザのパンデミックに関連する不確実性と不安が、翌年の出生数の急落を引き起こしたと言っています。
いずれの場合も、出産は単に延期されただけではありません。
女性の出産数それ自体が減少したのです。
これらの結果を組み合わせると、現在のパンデミックと不況により、出生数が30万人から50万人減少する可能性があると彼らは考えています。
米国は移民により出生率の低下を補うことができますが、CBOはコロナウイルス関連の旅行制限、ビザ処理能力の低下、および法的地位のない外国人参入者の減少により、移民の流入がすでに減少していると述べています。
その結果、今後10年間で移民が昨年より250万人少なくなると見込んでいます。
最終的な結果は米国の総人口が減少することを意味します。
2046年には米国の総人口は3億7400万人になると予想されており、これはCBOが昨年考えていたよりも1000万人少なく、2016年の予想より3400万人少なくなっています。
出生率の低下は移民の経済的必要性を訴える声を強化しますが、米国とヨーロッパの両方での近年の反発が示しているように、必ずしも有権者をより受け入れやすくするわけではありません。
米国では、今後数十年で以前の予測よりも労働者が少なくなるだけでなく、生産性も低下します。
CBOは、2031年から2050年の間に労働者1人あたりの生産量の伸びを大幅に下方修正しました。
これにはいくつかの要因が働いています。
1つは、労働力の減少それ自体が、企業の投資を減らすことです。
CBOはまた、高齢化する人口は住宅需要の減退をもたらし、これは将来の投資と成長を減速させると考えています。
誰もが口にするのを憚る話題(原文はThe elephant in the room:注1)は国の借金です。
CBOのような従来型の経済モデルでは、政府債務が貯蓄を吸収し、民間投資を圧倒する「クラウディングアウト」をもたらし、米国はさらに多くの債務を抱え込むようになると予想されています。
CBOは、パンデミック関連の借入と議会の裁量的支出の増加、高額の健康保険に対する税額控除のおかげで、連邦債務は昨年の国内総生産(GDP)比の79%から2049年にはGDP比の189%に急増すると考えています。
「クラウディングアウト」モデルは、近年うまくいきませんでした。
急激な財政赤字は、超低金利と時を同じくして見受けられるようになっています。
これはおそらく、世界的に投資が貯蓄に比べて持続的に弱いためです。
おそらく金利は低いままであり、政府債務は悪影響を与えることなく無期限に増加する可能性もあります。
しかし、そのシナリオでは、米国の投資と生産性の伸びは、CBOが現在見積もっているよりもさらに弱ぶくむ可能性があります。
到底、受け入れがたい未来図です。
Demographics and Debt Hang Over Long-Term U.S. Growth
ウォールストリートジャーナル経済主席コラムニスト:グレッグ・イップのコラムより
The Wall Street Journal
注1)The elephant in the room(部屋の中の象):それが事実であっても口に出せば正気を疑われるような事象のこと。転じて、気がついてはいるが誰もが口に出して言えないような重大な懸案のこと。または触れてはならないタブー、見て見ぬ振りなどを表す慣用句。
今回は管理者が従来、あまり得意としない経済コラムに挑んでみました。
米国で懸念されていることは、日本では既に現実化しています。
日本人女性の平均年齢は40代後半であり、50歳を視野に入れるところにまで至っており、到底子供を産み育てられる年齢ではありません。
抜本的な対策を講じなければ、日本は緩やかに沈む巨大客船と同じ運命を避けられません。
管理者 黒岩留衣