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日本には疫病から人々を守る妖怪がいた

by 黒岩留衣
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世界中が新型コロナウイルスの感染拡大に苦しみ、対応に追われている中で、特にロックダウンもせず、自宅待機命令の行政措置を下すでもなく、その反面、他のG7諸国と比べると、多くの感染者を出していない日本の不可解な現状に欧米のメディアは奇異の目を向けてきました。

 

有り体に言えば、日本と自国とで何が違うのか、彼らは理解できなかったわけです。

そんな中、英国のメディアBBCは「日本が疫病から守られている理由は『妖怪』の加護があるからだ」という報道をしました。

BBCのレポートです。

 

ここ日本でも他国と同様に新型コロナウイルスの蔓延によって悩まされていますが、この国は非常に独特の方法で感染拡大に対処しているようです。

それは疫病の拡散を防ぐと信じられている神秘的な、人魚にもよく似たYO-KAI(それは超自然的存在であり、時には信仰の対象でもあり、我々の知るところでは精霊に近い伝説の存在)の画像を共有することです。

 

魚の鱗、長い髪、3本のヒレのような足、そして鳥のようなクチバシを持ち、緑色の光に包まれた海の生き物…彼(彼女)はアマビエと呼ばれています。

アマビエは過去、何世代にもわたって忘れ去られていましたが、1846年に日本の民俗学の研究により初めて文章で紹介された縁起の良い妖怪です。

その後、地元(現・熊本県)の新聞社によってその木版の肖像画が報道されるや、瞬く間に日本中に広がったと言われています。

 

伝説によれば、アマビエは、病気の母に体力を取り戻してもらうために、夜明け前に海を訪れた一人の若者の前に姿を表します。

まるで墨を垂らしたような漆黒の海の中に、緑色の光が浮き上がり、アマビエはその光の渦の中から姿を現しました。

そして若者に2つの予言を与えます。

「次の6年間、この国は豊作によって祝福を受けるだろう」「だが、同時にこの国に伝染病が蔓延し、人々を苦しめるだろう」

「もしも、感染の拡大を食い止めたいのであれば、私の肖像画を描き、出来るだけ多くの人々とそれを共有しなさい」

 

若者はすぐに母のもとに戻り、この奇妙な出会いを語って聞かせました。

そしてアマビエの絵を描いて母に見せると、不思議なことに母の病状は次第に回復していったと言います。

若者と彼の母親は、アマビエの言葉に従って肖像画を描き、多くの人に配って回りました。

すると、この国で猛威を奮っていた伝染病が急速に沈静化したそうです。

その後、ここ日本では、アマビエの肖像画を描いた紙片は、神聖な霊力を宿したOFUDA(護符のようなもの)として大切にされたとの伝承が残っています。

 

3月上旬、この神秘的な妖怪が再び脚光を浴びる日がやってきました。

『#AMABIEchallenge』のハッシュタグが英語で発信されると、瞬く間に世界の5つの大陸に広がり、ツイッターやインスタグラムで何万もの画像や描写、あるいは可愛いキャラクターにパーソナライズされた画像がアップロードされました。

商魂たくましい一部の日本人はアマビエのイメージが付いたフェイスマスクや手指消毒剤の販売を開始しました。

こうした商品も多くのメディアの紹介により日本の消費者に好意的に歓迎されたそうです。

 

妖怪は、時には恐ろしい化け物や悪魔としても語られることがありますが、これらの伝承の精神は今日、日本全体で愛されています。

妖怪は江戸時代に広まり、20世紀初頭までは、新聞が地元の妖怪の目撃情報を大きな出来事として報道することが日本では珍しいことではなかったそうです。

歴史的に妖怪はかなり恐れられていましたが、最近の世代では友好的な形をとっています。

 

スタンフォード大学、東アジア研究センターのビクトリア・ラーバー氏は「妖怪は日本人の歴史的記憶の担い手です」と言います。

「それらは静的ではなく、むしろ動的でさえあります」「新しい古文書が発見されたり、水木しげる(日本の妖怪漫画の巨匠)の作品が原因で時々新しいポップアップが表示されたりします」

 

今からおよそ10年ほど前、水木しげる氏の代表的作品『GeGeGe no Kitaro』の作中でアマビエが登場したことがありました。

その作中でアマビエが自身が長く人々の間で忘れ去られた存在であることを嘆くシーンが描かれていました。

ですが、それからおよそ10年後に彼(彼女)が再び日本中の注目を集めることになることまでは『予言』できなかったようです。

 

参照:BBC travel

 

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