Home 時事ニュース オックスフォード大学が開発中のワクチン『期待持てる』結果報告

オックスフォード大学が開発中のワクチン『期待持てる』結果報告

by 黒岩留衣
99 views

オックスフォード大学が開発したコロナウイルスワクチンは、臨床試験で、安全で且つ有意な免疫反応を引き起こしたことが報告された。

1,077人が参加した臨床試験では、コロナウイルスと戦うことができる抗体とT細胞が作られたという。

 

『ChAdOx1 nCoV-19』と呼ばれる開発コードのワクチンは、前例のない速度で開発されている。

このワクチンは、チンパンジーからとった一般的な風邪のウイルス(アデノウイルス)を弱めたものからつくられたもので『人間に感染しないよう』に作り変えられている。

この時点でのウイルスは遺伝子組み換え技術によって大きく変更されているため、人に感染を引き起こしたりすることはなく、反面、コロナウイルスのように見えるようにすることもできない。

そこで科学者たちは、新型コロナウイルスの表面にみられるスパイクタンパク質(細胞に侵入するための重要な部分:太陽のコロナのように見える)への遺伝的指令を、開発中のワクチンにコピーすることでこれを実現した。

つまり、このワクチンは新型コロナウイルスに似て非なるものとなり、人体には無害であるものの、免疫システムが新型コロナウイルスを攻撃する方法を学習することができるようになる。

 

これまでコロナウイルスへの焦点の多くは抗体に関するものであったが、これらは私たちの免疫防御システムの一部にすぎない。

抗体は、ウイルスの表面に付着する免疫系によって作られた小さなタンパク質であり、とりわけ中和抗体はコロナウイルスを無効にすることができる。

白血球の一種であるT細胞は、免疫システムを調整し、感染した体の細胞を特定して破壊することができる。

ほぼすべての効果的なワクチンは、抗体とT細胞応答の両方を誘導する仕組みになっている。

 

T細胞の活動レベルはワクチン接種の14日後にピークに達し、抗体レベルは28日後にピークに達した。

ランセットの報告が示したように、この研究は、それらの効果がどのくらい続くかを理解するのに十分なほど長くは行われていない。

 

「それらは非常に有望であり、人体の保護に関連する可能性のある応答が得られることを信じています」と、オックスフォード大学ワクチン開発チームの筆頭研究者アンドリュー・ポラード教授はBBCに述べた。

「しかし、誰もが知りたい主要な問題は、ワクチンが期待通りに機能するか、それが十分な期間にわたって防御効果を提供し続けるかであり…(中略)、それは持久戦になりそうです」

 

この研究では、90%の人が1回の投与で中和抗体を発現したことが示された。

10人だけが2回投与され、結果、すべてが中和抗体を獲得した。

「防御効果を得るためにどれくらいの反応が必要なのかはわかりませんが、2回目の投与で反応を最大化させること(ブースター効果、または追加免疫効果と呼ばれる)はできます」とポラード教授は語った。

 

ワクチン接種による危険な副作用は認められなかったが、試験に参加した人の70%が発熱または頭痛を発症した。

研究者たちは、これはパラセタモール(アセトアミノフェンとも呼ばれる。一般的な解熱鎮痛薬の一つ)で十分に管理できると言う。

 

コロナウイルスワクチンが年末までに有効であることが証明される可能性はあるものの、それは広く一般に利用可能となることを意味するわけではない。

ボリス・ジョンソン英国首相は次のように述べている。

「明らかに望みはあります。私は日々指を交差させました(神に祈りを捧げるという意味)」

「ですが今年、または実際に来年には十分な量のワクチンが手に入ると100%確信しているかと問われると、残念ながらそれは少々過言です」

「我々はまだ、そこまでには至っていないようです」

 


(参照:BBC

Coronavirus: Oxford vaccine triggers immune response

注:文中の()は翻訳者注記

 

ランセットに掲載された報告書(PDF・2MB)

 


 

既に英政府は1億9000万人分の様々なワクチン提供を受ける契約を締結している。

内訳は

  • オックスフォード大学のワクチン1億人分
  • ビオンテック/ファイザーのワクチン3000万人分
  • ヴァルネヴァのワクチン6000万人分

(参照:BBC

 


PR

外信記事を日本語でお届けします