李梓彥(り・しげん)はこの街の典型的な若者でした。
両親の言葉によれば、彼はビデオゲームとバスケットボールを愛していました。
彼は20代半ばを香港の迷路のようなショッピングモールや映画館で過ごしました。
彼は動物が好きで、特に2匹の猫を愛していました。
李氏は、雨傘運動の参加者として、2014年に政治活動に目覚めました。
79日間にも及ぶ街の騒乱は、民主的な普通選挙の開催という当初の目標に失敗しましたが、新世代の香港人に民主主義運動への参加を促しました。
李氏の貢献は負傷者に応急処置を施すことでした。
彼は負傷者を治療し、催涙ガスによって刺すように痛む目を生理食塩水で洗い流すために最前線にいました。
「彼は香港が大好きだったのだと思う」と父親は、プライバシーと身の安全を保護するために氏名を公開しないことを条件に語りました。
「彼は自分の愛した香港で正義と民主主義のために戦いたいと願ったのだと思います」
李氏と16歳から33歳までの他の11人の香港居住者からの連絡が途絶えてから30日以上が経過しました。
中国の沿岸警備局がスピードボートに乗って台湾を目指そうとした彼らを捕縛した後、深圳に連行され、そこで連絡が取れなくなっています。
香港の警察は土曜日遅くの声明で、8月23日以来拘留されている12人が深圳公安局の塩田拘置所に拘留されており、まもなく正式に逮捕されると述べました。
中国の法律によって裁かれるであろう彼らの逮捕は、12人の運命が中国本土の法制度によって深く飲み込まれたことを意味しています。
彼らは、ほぼ確実に有罪判決を受けるであろうとみなされています。
彼らの家族は現在、香港当局が介入して彼らの帰還を求めることを要求しています。
「私たちはできる限りのことをしてしています」
「ですが、香港政府は私たちに気を配ろうとはせず、代わりに私たちを弄んでいるかのようです」
李氏の母親は言葉を続けました。
「私が望むことは奇跡だけです」
李氏の両親は、昨年の9月29日、警察官らが立法評議会の近くの通りに飛び出し、抗議者との戦いを始めたとき、抗議行動のライブストリームを見ていました。
混沌とした状況の中で、彼らは29歳の自分たちの息子が、顔を地面に押し付けられ、その視線の先がカメラを見つめている様を目撃しました。
その日、中華人民共和国の建国70周年が近づいていたため、警察は特に攻撃的でした。
機動隊は催涙ガスとゴム弾を発砲し、放水砲からの青色の水に染まった抗議者に殴りかかりました。
李氏の母親は、息子が拘束されていた警察署に急行し、逮捕から約9時間後にようやく彼に会えました。
彼の肩は打撲傷を負い、背中全体に傷があったと彼女は証言しています。
李氏は検査のために病院に運ばれ、翌日、処分保留のまま保釈が認められました。
設計士として働いていた李氏は、当初は違法集会に参加した罪で起訴されましたが、その後、警察官への暴行罪とともに、10年の刑を宣告しうる煽動罪の容疑に格上げされました。
彼の保釈条件の下で、李氏は彼が逮捕された地域に戻ることはできず、門限に従わなければなりませんでした。
彼は慣れ親しんだルーチンに戻り、いつものように仕事に行き、友達と会いました。
しかし、それ以降、彼は物静かになり、彼の街で民主主義と正義に対する彼の要求を声に出そうとはしませんでした。
8月12日、李氏は次の10年間を刑務所で過ごすかもしれないという最悪のシナリオについて、彼の母親と感情的な会話をしたと言います。
「私の目には、彼がしたことはまったく暴力的ではなく、最前線の人々を助けているだけに見えました」と母親は言いました。
抗議に向かった日、彼の背負ったバックに入っていたのは包帯と絆創膏と生理食塩水のボトルだけでした。
「私は希望を持っていました」
「これは何かの間違いだ。おそらくあなたは有罪とされたり、刑を宣告されたりすることはないはずだ」と彼の母は息子にそう言ったそうです。
数日後の8月22日、李氏はいつものように父親と夕食を共にしました。
彼が寝る前にほとんど言葉が交わされなかったそうです。
李氏の父親が翌日に目覚めた時には、息子の姿はありませんでした。
6日後、李氏の父親は行方不明者の報告を提出するために近くの警察署に行きました。
彼が息子の名前を言った直後、警官は彼の息子が本土に拘留されたと彼に言いました。
警察官が拘留を確認する公式通知を持って彼の家に現れたときでさえ、彼の両親はそれが真実ではないかもしれないと思っていました。
香港の警察は土曜日の声明で「彼らは香港での刑事責任を回避するために、海を経由して台湾に逃げることを画策した」と述べました。
香港の治安部長ジョン・リーはテレビのインタビューで「香港当局は事件に介入できる立場にない」と主張しています。
香港の特別行政区長官のキャリー・ラムは「これらの12人の犯罪者が、法律に従って裁かれ、法的責任に直面することは合理的かつ公正です」と言いました。
彼らの言葉は、李氏の両親をひどく失望させました。
李氏の母親は息子に手紙を書き、それが拘留中の彼女の息子に届くことを願って入国管理局に送りました。
母です、お元気ですか?
母はあなたがいなくて寂しいです。 いつ帰って来てくれますか?
あなたが去ってから毎日、私は不眠症に苦しんでいます。
時々私は夜中に悲鳴を上げることがあります。
どうか、すぐに帰ってきてください。
私はあなたを失うことに耐えられそうにありません。
あなたの性格はいつも、とても無私無欲で愛情深いものでした。
あなたは『香港はすでに失われている、香港はもう終わった』と言いました。
あなたがこの道を選ぶことがどれほど辛かったことか母は知っています。
あなたがどんな将来を歩もうと、あなたは私の息子です。
母はあなたを誇りに思っています。
母はいつも、いつまでも、あなたを支え続けます。
(参照:The Washington Post)
この投稿記事を書くにあたって、李梓彥氏のインスタグラムを確認して来ました。
ごく普通の若者という以外にはありません。
まだ幼い頃と思われる彼の写真も掲載されていました。
ご両親の苦痛を思うと、言葉もありません。