ウォール街にとって、この度の選挙はどちらが大統領に選ばれるかだけに注目しているわけではありません。
並行して行われる上院議員選挙もほぼ同じくらい重要です。
多くの投資家は、ジョー・バイデンがホワイトハウスのオーバルオフィス争奪戦に勝利するであろうと判断しています。
しかし、より大きな経済刺激策やバイデン氏の医療政策など、多くの重要な政策転換の見通しは、どちらが上院を支配するかに大きく依存します。
それを予測するのは株価の値動きを予想するのと同じくらいに非常に困難です。
最新の世論調査は、民主党が上下両院の統一された支配権を獲得できる可能性が高いことを示していますが、仮に共和党が大統領職を失ったとしても上院の過半数を維持する可能性もあります。
投資家は民主党のスイープの見通しを受け入れているようで、数兆ドルのコロナウイルス援助パッケージを手に入れ、インフラプロジェクトへの支出を増やすための最良のチャンスだと考えているようです。
コロナウイルス感染の急増によって引き起こされたボラティリティにもかかわらず、いわゆるブルーウェーブ(青は民主党のシンボルカラー)への賭けは、小型株、再生可能エネルギー関連株を押し上げている一方で、投資家は成長拡大、物価上昇、政府借入の増大を見越して長期債券は売られています。
上院共和党は、トランプ政権と下院民主党の間の協議で検討中の1.8兆ドルのパンデミックの追加支援パッケージに対し、特に連邦債務拡大の懸念から反対の姿勢を打ち出しています。
ウォールストリートの一部の人々は、共和党上院議員が民主党の大統領に協調することを望んではいないと信じており、バイデン氏の勝利と共和党による上院支配が相まった場合、トランプ氏の勝利を含むあらゆる選挙シナリオの中でも最小の支出法案になる可能性があることを示唆しています。
UBSグローバルウェルスマネジメントのアメリカ債券部門の責任者であるトム・マクローリン氏は、民主党が大統領選に勝利しつつも「上院を支配できなかった場合、株式が否定的な反応を示す可能性がある」と述べました。
それでも投資家はまた、バイデン氏が勝利し、かつ民主党が上下両院を統一支配した場合、民主党政府が増税と規制の強化を行い、企業の利益を損なう可能性があることを懸念もしています。
そのため上院共和党が過半数を維持すれば、民主党の大胆な立法の見通しに対するある種の監視者として機能するのではないかとの見解が示されています。
このようなシナリオの場合、市場がパンデミックの混乱から過去最高に近い状態に回復するのを見た現状に対する大きな変化が制限される可能性が高まると信じられています。
これにより、特にヘルスケアやエネルギーなどの分野で、長期的に株価が上昇する可能性があります。
ですが、選挙結果を巡るウォール街の予測は「おぼつかないもの」である可能性があります。
なぜならウォール街には、選挙結果を予測することに失敗した苦い記憶があるからです。
2016年の選挙でトランプ政権が誕生するまで、彼の予測不可能なスタイル、市場を席巻する世界的なポピュリズムとの結びつき、貿易政策のレトリックなどを考えると、株価にとって良くないことが起こるとの予測に多くの人が賭けていました。
投票日の夜、彼の驚きの勝利が明らかになった時、世界の株価は急激に落ちました。
ところがその後、投資家は、共和党が大統領職と上下両院を同時に掌握したことを受け、共和党新政府の下で規制緩和と減税の可能性を再評価した結果、彼らはコースを逆転させました。
このような物語を語る理由は、投資家の分析を複雑にする重要な要因の一つが、上院議席数の差にあることを説明するためです。
4年前、共和党は上院で52議席を確保しました。
それは最終的には市場に優しい減税を通過させるのに十分でしたが、ヘルスケア部門の一部の企業を傷つける可能性のあるアフォーダブルケア法(医療保険制度改革法:俗に言うオバマケア)を廃止するには十分ではありませんでした。
上院の少数派院内総務チャック・シューマー(N.Y:民主党)は、民主党が来週力強いショーを見せれば多数派院内総務になる立場にあり、他のイニシアチブの中でもとりわけ、薬価引き下げや気候変動と戦うための積極的な行動への支持を表明しています。
彼はまた、議事妨害(フィリバスター)を克服するために通常必要とされる60票ではなく、単純な過半数で法案を可決することを容易にする手続き上の措置を講じることを除外していません。
民主党は、民主党に近い2人の無所属議員を含む47議席を保持して選挙に向かいます。
世論調査の平均によると、彼らは上院で3議席を追加獲得する良い兆候を持っています。
これは、上院で賛否同数の票が投じられた場合、副大統領によって最終の1票が投じられる事を考慮すれば、過半数を確保するに必要にして十分です。
しかし、民主党にとって心強い夜は、彼らにさらにいくつかの議席をもたらす可能性があります。
この場合、投資家にとって、ギリギリの勝利とは大きく異なるシナリオを提示します。
バイデンの勝利と上院の決定的な民主党のテイクオーバーは、民主党員によって「国が抱えている諸問題の解決を実行するため、アメリカ国民から信任を受けた」と解釈される可能性が高いと、ハイト・キャピタル・マーケッツの分析部門責任者であるベンジャミン・ソールズベリー氏は述べています。
このシナリオでは、民主党はフィリバスターに耐えるための60票を獲得するために、味方につける共和党の造反者の数がより少なくて済みます。
また、市場アナリストによると、このようなシナリオの場合、彼らは手続き上の策略を通じて共和党の抵抗を回避する能力を獲得する可能性があると伝わっています。
投資家は、共和党が上院とホワイトハウスを保持することに加えて、下院まで取り戻すとどうなるか?についてほとんど考慮に入れていません。
万が一、そのようなシナリオが現実化した場合、彼らの政策課題は、トランプ氏の就任後2年間によく似たものになる可能性があります。
当時、彼らは軍事費を増やし、他の企業の中でも大規模なテクノロジー企業を支援する大幅な減税を通過させました。
すべてのセクターが異なる選挙シナリオによって等しく影響を受けるわけではありません。
アナリストによると、バイデン氏が勝利すれば、民主党が上院を制するか否かに関わりなく、石油・ガス会社や電力会社に新たな規制を課す可能性が高いと言います。
対照的に、民主党は明確な上院の過半数を必要とし、仮にこれを獲得した場合、薬価に決定的な行動を取るために数の力を広範に行使することをいとわないかもしれません。
民主党のブルー・スウィープの影響を制限する可能性のある1つの要因は、既に多くの投資家がその備えをしているということです。
たとえば市場は、歴史的な割安水準となっているヘルスケア株の押し目買いを検討する動きが広がりつつあると最近のUBSレポートは述べています。
レポートの著者の1人であるトム・マクローリン氏は「市場はすでにセクター全体で、ある程度の不確実性のコストを見積もっているようだ」と述べています。
Investors See Senate Races as Key to Election’s Market Impact
The Wall Street Journal
経済アナリストは選挙の専門家ではないため、選挙の動向に関しては政治アナリストの分析にある程度依存します。
そのため、昨夜以来、政治アナリストの寄稿を読み漁りました。
おかげさまで少々寝不足気味ですが、皆様の激励のコメントは別途お受けしております。
冗談はともかく、政治アナリストの分析では、民主党は大統領選挙に勝利し、かつ上院で3〜8議席を上積みするであろうとの分析が多く、最も控えめな分析でも民主党が上院を支配することになるだろうとの判断が示されています。
そうした予想が現実になれば、民主党は、ホワイトハウスと上下両院を支配するトリプル・スウィープが完成することになりますが、市場はこうした動きを既に織り込んでおり、大きな混乱にはならないだろうと言う見方が一般的でした。
むしろ彼らが指摘していた最大の懸念は、大統領選挙を巡る混乱が激化し、かつ長期化した場合のシナリオでした。
これは米国の長い歴史を振り返っても経験の乏しい事態であり、予測は困難であると述べられていました。
ところで、毎度同じような事を言っているようですが、経済記事を読むのは大変です。
管理者自身に基本的な知識が乏しいので、かなり神経を使って読み込んでいます。
経済や株式市場にお詳しい方々のアドバイスやご意見を頂戴致しますと、管理者は大変喜ぶと思います。
管理者 黒岩留衣