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トランプの無関心と怠慢

by 黒岩留衣
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トランプ大統領はついに先週、いくつかの良いニュースを受け取りました。

製薬大手のファイザーは、実験的なコロナウイルスワクチンの効果が90%以上であると発表しました。

ですが一方で、全国ではコロナウイルスの症例が急増し、11月4日から1日10万件以上の新規症例の発生が継続しており、死亡者も増加しています。

 

数週間前から、トランプは致命的なパンデミックを積極的に管理することをほとんどやめました。

これまでに少なくとも244,000人のアメリカ人が死亡し、少なくとも1,090万人が感染し、国家経済の首を絞めています。

大統領は「少なくとも5か月間」コロナウイルス対策本部会議に出席していないと、匿名を条件にある政府高官は述べました。

 

今、彼はもっぱら自分の政治生命のためにのみ戦っており、選挙が彼に対して何らかの組織的な不正があったと証拠を示さずに主張している反面、トランプは彼の仕事の中心的な義務の1つを放棄しました。

それが厳しい冬に向かうこの時期に、国中に壊滅的なパンデミックが広がっている理由の一つでもあります。

 

「最近、彼がパンデミックに焦点をあてていると感じたことはありません」とある上級行政官は言いました。

「しかし、そこに焦点を戻す必要があることは誰の目にも明らかです」

 

新たに急増しているコロナウイルスのパンデミックに対するトランプの無関心と怠慢についてのこの説明は、12人以上の行政当局者、トランプの側近者、公衆衛生顧問、および対応に精通している他の人々へのインタビューに基づいており、その多くは匿名を条件に内部の状況について話しました。

 

金曜日に、トランプはローズガーデンに現れ、ワクチンを迅速に開発するための彼の政権の取り組みであるワープスピード作戦の最新情報を提供しました。

大統領と彼のチームはいくつかの心強いニュースを共有しました。

少なくとも2000万回のワクチン投与が12月には準備ができており、翌月には2500万から3000万回の投与が予定されています。

 

しかし、トランプはワクチンの進行が遅すぎて大統領選挙で彼を助けることが出来なかったため、彼の機嫌は著しく悪化したように見えました。

彼はファイザーのワクチン開発が投票日に間に合わなかったことを周囲に当たり散らした後、彼のローズガーデンでの記者会見中で、ニューヨーク州知事アンドリュー・M・クオモ(民主党)への攻撃はあったものの、ウイルスによる犠牲者の増加については1度も言及しませんでした。

 

あるソーシャルメディアでの発言で、トランプは、CNNが「『COVID!COVID!COVID!』とまるでドラムビートのように繰り返す。もうウンザリだ!」と非難し、怒りのメッセージを投稿したこともありました。

トランプは、彼自身の公衆衛生と医療の専門家でさえアドバイスを避けてきました。

 

ホワイトハウスのコロナウイルス対応コーディネーターであるデボラ・バークス博士は、レストランやバーでの直接の食事を減らすことを数回提案しましたが、トランプは彼女の提案をことごとく却下したと政府高官は述べました。

彼はまた、国立アレルギー感染症研究所の所長であるアンソニー・S・ファウチ博士による、マスク着用の重要性に関するより積極的なメッセージの呼びかけも無視したと当局者は述べました。

後方左:デボラ・バークス博士、後方右:アンソニー・ファウチ博士

 

大統領はもはや彼の医師チームからパンデミックについて定期的に説明を受けることさえ無く、バークス博士が作成した毎日のウイルス報告を読むことさえないと政府高官は述べています。

補佐官によると、こうした傾向はここ数週間でますます著しくなっており、彼らの存在はウェストウィングではほぼ完全に無視されているとのことです。

行政当局者によると、ファウチ博士ら政府の公衆衛生の専門家の何人かは、ここ数週間、ホワイトハウスを訪れることもめったにないということです。

 

ペンス副大統領の元顧問であり、ホワイトハウスのコロナウイルス対策本部の補佐官であり、後に政権を辞任し、バイデン氏を支持したオリビア・トロイは、現在の状況を「非常に困惑している」と述べました。

「大統領選挙が終わった今、彼は大統領として最後のリーダーシップを発揮することができると思うでしょう」とトロイは言いました。

「彼はここでアメリカ人の幸福に焦点を合わせる必要があります」

 

ジョージ・W・ブッシュ政権時代の米国大使であり、元世界保健機関の副局長であるジャック・チョウも、トランプの危機への対応を同様に警戒していました。

「大統領としての最優先の義務は米国民の安全を守ることであり、これは米国がこれまで直面した中でも最も顕著な病です」

「私たちには問題から背を向け、事態を悪化させた最高司令官がいます 」とチョウはいいました。

「過去8か月間に複数回、より安全なレベルに下げる機会がありましたが、ことごとく失敗しました。事実上、私たちはこのパンデミックのコントロールを失っています」

トランプ氏は、金曜日のローズガーデンでの記者会見で、増加するコロナウイルスの犠牲者について言及しなかった。

 

ホワイトハウスは、コロナウイルスのパンデミックへのトランプの関与に対する批判の多​​くに異議を唱えました。

ホワイトハウスの広報官サラ・マシューズ氏は「トランプ大統領の素晴らしいリーダーシップのおかげで、12月に2,000万人のアメリカ人に安全で効果的なワクチンを提供し、その後は月に2,500万〜3,000万人分のワクチンを提供する予定です」と語っています。

 

多くの連邦保健当局者は、国のウイルス対応を強化するためにもっとや​​るべきことが沢山あると固く信じている反面、ほとんどの人は、より確固たる行動を大統領に求めることを恐れていると事情に詳しい2人の当局者は語っています。

 

専門家によると、パンデミックに対するトランプの怠慢は、彼の政権が崩壊し、バイデンと彼のチームが権力を握る準備をしているまさにその時、特に不安定化していると述べています。

これまで選挙結果の承認を拒否してきたトランプ氏は、正式な移行の開始を拒否することで、パンデミック対策をさらに一層妨げています。

ある政府高官は、トランプはある種のパントマイマーであると述べています。

「大統領は自分が選挙に勝ったふりをしている」

 

すでに国防長官のマーク・T・エスパーや他のペンタゴンの最高幹部を解雇したトランプは、彼が自分に対して『不忠者』であると見なす人々をホワイトハウスから一掃するために、彼の最後の数週間を使うだろうと、複数の関係者は述べています。

専門家は、トランプ政権と次期バイデン政権の両方が、国がパンデミックの最悪の範囲に入っていることを強調し、マスクを着用し、大規模な集会を避けることを含め、ウイルスを真剣に受け止めるよう人々に促す強力で団結したメッセージを送る必要があると述べました。

 

「パンデミックは1月20日(大統領就任式の日)を超えて存在するでしょうが、ホワイトハウスはバイデンのチームを支援し、プログラムの状況や遭遇したボトルネックについて説明する必要があります」

「それで初めて、バイデンチームは確固たる戦略を立てることができます」とチョウは言いました。

 

「現在、両者の間には鋼鉄の壁があり、2つの異なる平行宇宙があります」

「それがずっと長く続く場合、バイデンの戦略は、第二・第三の波を制御するために必要な行動が、より遅く、より弱くなる可能性があります」

 

オバマ政権時代に公衆衛生顧問を務めたことのあるカビタ・パテル氏は、トランプ政権のスタッフの間に存在している「ある種の欲求不満」について説明しました。

一部のトランプ政権当局者は、彼女に連絡を取り、次期バイデン政権を支援したいと望んでいると述べたといいます。

「ですが、彼らには非常に強力な秘守義務があり、バイデン氏と言えども外部者に情報を明かすことが出来ません」とパテル氏は言いました。

「現在、タスクフォースがありますが、しかし、それはバイデン移行チームのタスクフォースにすぎず、残念ながら行政機関に対する権限がありません。 CDCはバイデン次期大統領の言葉に基づいて行動することは許されません」

 

一方、舞台裏では、多くの行政当局者が混乱の肖像画を描いています。

匿名の2人の行政当局者は、マーク・メドウズ主席補佐官が、ファウチ博士らがパンデミックについて『あまりにも黙示録的すぎる』として批判していると述べています。

メドウズ主席補佐官は、コロナウイルスに焦点を合わせることが『トランプを政治的に傷つける』と固く信じていると彼らは語りました。

 

専門家は、これまでのトランプ政権のウイルスに対する誤った対応は、国が冬に向かうにつれてパンデミックの被害を悪化させるだけだろうと落胆しています。

元FDA長官であるスコット・ゴットリーブ博士は、連邦政府がそのアプローチを変更する可能性が極めて低いことは明白であり、次善の策として、州は独自の取り組みを強化する必要があると述べました。

 

「残念ながら、入院者数と死亡者数は、今後は非常に大きく増えるでしょう」とゴットリーブ博士は言いました。

「緊急に何らかのできうる限りの対策を講じなければ、私たちはただ多くの人々の死を見つめるばかりになるでしょう」

 

 

Trump tunes out pandemic surge as he focuses on denying election loss

The Washington Post

公務員に秘守義務があることは当然ですが、判例法上、トランプ大統領が認めればバイデンチームはホワイトハウスの情報ソースにアクセスすることが認められるのだそうです。

アメリカは英米法と呼ばれる法体系の中にありますので、判例を尊重するわけです。

これは大陸法と呼ばれる法体系に属する日本とは少し違うアプローチになります。

逆に言いますと、トランプ氏が選挙結果を認めていない以上、バイデンチームはファウチ博士らの経験を共有できないことになります。

一方で、パンデミックの第二波の影響は顕著です。

欧州やインドなどの一部のアジア地域は特に深刻で、日本も最近、新しい感染者が増えています。

トランプ大統領は、自身の名誉のためにも、ホワイトハウスでの最後の数週間を公衆衛生の保護のために費やして欲しいと思います。

彼が2024年の大統領選挙に再度出馬する気があるのなら、そうした方が賢明だと思います。

 

管理者 黒岩留衣

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