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コラム:トランプが無能で良かった

by 黒岩留衣
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私はトランプ大統領の無能さにこれほど感謝したことはありません。

彼はクーデターを適切に組織することさえできません。

いや、やれと言っているわけではありません、念のため。

 

4月8日以来、彼は郵送による投票に終始反対しており、証拠の断片すらなしに、大規模な詐欺が横行していると主張しています。

それが彼のプランであることは明白でした。

彼は、選挙日当日の投票合計に基づいて勝利することができるように、主に民主党支持者による郵送投票を全面破棄することを要求するつもりでした。

 

一般投票が終了してからわずか数時間後、トランプは、ジョージア州、ペンシルベニア州、ミシガン州などの激戦州で、開票が続いているにもかかわらず、自らが『勝利した』と主張しました。

木曜日、選挙人団確保数では既にはるかに遅れをとっていましたが、彼の口数は倍増しました。

「合法的な投票を数えるならば、私は簡単に勝ちます。 違法投票を数えると、彼らは私たちから選挙を盗む可能性があります」

 

トランプの「違法投票」の定義は、明らかに彼自身に対して投げかけられるべきものです。

これは、立憲共和制の指導者の口からではなく、ロバート・ムガベ、アレクサンドル・ルカシェンコ、ニコラス・マドゥロの口から聞くことを期待すべき内容のものです。

私たちの歴史の中で、私たちの民主主義にそのような露骨な攻撃を仕掛けた大統領はいません。

 

トランプは、予想通り、選挙に対する怒号の列に加わりました。

元下院議長のニュート・ギングリッチは、連邦捜査官が選挙責任者を直ちに逮捕することを要求し、元ホワイトハウスの補佐官セバスチャン・ゴルカは、軍の将軍が兵を引き連れて「直ちに投票所のドアを蹴り壊し、犯される犯罪を止める必要がある」と述べています。

 

しかし、慈悲深いことに、それは起こっていません。

言われていることよりも重要なのは、言われていないこと、または行われていないことです。

これまでのところ、ウィリアム・P・バー司法長官、マーク・エスパー国防長官、チャド・ウォルフ国土安全保障長官らは、トランプを支持する一言を公に述べていません。

トランプの根拠のない詐欺の告発は、トランプを敗北から救うための公的な動きを見せていません。

トランプはそれらの一部または全員を解雇する可能性がありますが(パージは作業中であると言われています)、後継者が彼の救援に来るかどうかは疑わしいままです。

 

また、トランプが多くを任命したにもかかわらず、最高裁判所は未だに介入していません。

ジョージ.W.ブッシュが2000年に行ったように、強力な法務チームを動員することもできないため、トランプは薄暗い低ワットの支持者、ルドルフ.W.ジュリアーニ、リチャード・グレネル、パム・ボンディ、コーリール・ワンドウスキーらの働きに依存しています。

彼らの議論はFoxの「ニュース」ではうまく機能しますが、これまでのところ、法廷ではあまりうまく機能していません。

トランプの最高裁判所における任命者は、トランプの祀った祭壇に自らの英名を捧げるために急いで馳せ参じようという気もなさそうに見えます。

 

私たちの多くは、過去数年間、トランプが仮想現実の世界に住む傾向を非難してきました。

しかし、最終的には現実が彼の尻に噛み付きました。

 

トランプと彼のカルト信者が実際の詐欺事件を何1つ指摘できていないという事実、つまり選挙結果を覆すのに十分な主張はなく、このままではかなりの大差で敗北する可能性があるという事実は、彼らが結果に対して効果的に異議を唱えることが困難であることを示唆しています。

そもそも、民主党が大統領選挙で『組織的で、かつ大規模な詐欺』を行ったが、下院および上院の選挙結果を修正することを『うっかり失念していた』という彼らの理論は、笑えるほど馬鹿げています。

 

これは、共和党がトランプの旗の下に熱狂的に集結していない理由を説明するのに役立ちます。

これまでのところ、下院少数派院内総務であるケビン・マッカーシーは『トランプがすでに勝利した』と主張するほど恥知らずな数少ない共和党のリーダーの1人です。(注1)

ドナルド・トランプ・ジュニアは、ニッキー・ヘイリーやトム・コットンなどから忠誠心あふれるツイートを引き出しました。

テッド・クルーズとリンゼー・O・グラハムは、トランプが選挙のやり直しに値することを法外に示唆しました。

 

しかし、ペンス副大統領でさえ、選挙が盗まれたというトランプの主張を反映していませんでした。

彼の注意深く書かれたツイートは次のように述べています。

「私は@realDonaldTrump大統領と一緒に立っています。すべての『合法な投票』を数える必要があります」

 

トランプの選挙参謀であり、元ニュージャージー州知事のクリス・クリスティは、彼の根拠のない主張を実際に非難しました。

誠実さを持って選出された少数の共和党員もこれに倣いました。

マルコ・ルビオ上院議員や上院多数派院内総務のミッチ・マコーネルなどの他の人々は、すべての法定投票を数えることを主張して『臭化物』に蓋をしました。

 

ほんの数週間前にハンター・バイデンのラップトップ・スキャンダルを、それはそれは熱心に宣伝していたニューヨーク・ポストは、トランプの木曜日のメルトダウンを枯れた見出しで却下するしかありませんでした。

「トランプ氏の不正選挙の主張には根拠がない」

 

フォックスのニュース部門にアリゾナ州のバイデンへの勝利のコールを取り消すことさえ強制しないルパート・マードックが『トランプニック号』から飛び降りようとしていることは明らかです。(注2)

彼らはトランプを使って彼らが望むもの(裁判官、減税)を手に入れて喜んでいました。

しかし、選挙は終了しつつあり、彼らはもはやマードックにとって有難い存在ではなくなりつつあります。

マードックは幸せです。

彼はおそらく、これ以上、トランプの無知なツイートに返信するよう求められなくなるでしょう。

 

かつてハリー・トルーマンは「ワシントンで友達が欲しいなら、犬を飼えばいい(注3)」と言ったと伝えられています。

トランプには犬さえいません。

 

Thank goodness Trump is too incompetent to properly organize a coup

 

マックス・ブートのコラムより

The Washington Post

マックス・ブートはワシントンポスト紙のゲストコラムニストであり、政治アナリストであり、軍史研究家です。

彼は熱心な共和党員であり、共和党の歴代の大統領候補の外交政策アドバイザーを務めたこともあります。

4年前、彼は「トランプが大統領になれば共和党は破滅する」と言い残した後、反トランプ教徒になりました。

注1)彼はFOXニュースに出演し「すべての米国民は立ち上がるべきだ。不正を目撃した人は我々に教えてほしい」「黙って見過ごしてはならない。こんなことが目の前で起きるのを許すわけにはいかない」と発言しました。


注2)意外な事にアリゾナ州でいち早くバイデン当確を打ったのはFOXでした。この時、トランプ陣営はFOXの創業者であるルパート・マードックに激しい抗議の電話をかけたにもかかわらず、拒否されました。ホワイトハウスの楽勝ムードが一変したのはここからだったとニューヨークタイムズが伝えています。


注3)“If you want a friend in Washington, get a dog.”:トルーマン大統領の言葉として伝わっています。大統領は孤独な存在であるという意味でしばしば引用されます。

ちなみにオバマ前大統領は就任後に犬を飼いました。

 

この投稿記事を書いていた時、まだバイデン氏の勝利は確定していませんでしたので、少しずれた投稿になってしまいました。

それはともかく、トランプ氏の科学を軽視し、専門家の助言を無視し、命を蔑ろにし、国民の分裂を煽り、あまつさえ民主主義を否定するかのような言動がこれで終わるかと思うと、正直にホッとしています。

最後に彼に望むことがあるとすれば、潔く敗北を認め、国民に冷静さと団結を取り戻すように語りかけてほしいと願うだけです。

 

ところで、米国には「太った女性が歌を歌う」という慣用句があります。

これはオペラ歌手は得てして恰幅の良い女性が多く、太った女性が歌を歌い終えるまでは歌劇は終わらないという意味です。

転じて「勝負はまだ決着がついていない」「勝負を諦めるな」という意味になり、MLBの野球解説者が好んで使うフレーズです。

高倉健さんが主演したコメディ「ミスター・ベースボール」にも登場します。

ですが、トランプ氏のために歌った太った女性は舞台の袖に帰っていったようです。

 

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管理者 黒岩留衣

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