トランプ大統領は、ホワイトハウスを去った後、マンハッタンでの犯罪捜査、ニューヨーク州検事総長による詐欺や複数の訴訟の捜査など、多くの法的問題に直面することになるでしょう。
トランプ氏は来年1月に辞任した後、4年近くにわたって彼を擁護してきたホワイトハウスの弁護士チームを含め、大統領の特権的な法的保護を失います。
連邦刑事捜査において現職大統領は訴追できないとする司法省の指針に基づく保護も、もはや適用されなくなるでしょう。
ロシアの選挙介入疑惑捜査を指揮していたロバート・モラー特別検察官は、トランプ氏を司法妨害の罪で訴追を要求しなかった理由の1つとして、この司法省の指針を挙げています。
トランプ氏がホワイトハウスを退去することで、ニューヨーク州の捜査と彼が直面する訴訟の両方が、より早く前進する可能性があります。
トランプ氏は現職大統領を訴追、または提訴することはできないと主張し、その多くについて進展を遅らせようとしてきました。
元連邦検察官でデューク大学法学部のリサ・カーン・グリフィン教授によると、トランプ氏は民事上および刑事上の重大な係争問題を抱えていると言われています。
「ある時点で、彼は追い詰められることも考えられます」と彼女は述べましたが、それでも前大統領の刑事訴追まではありそうもないとも付け加えました。
トランプ氏の弁護士はコメントの要請に応じませんでした。
トランプ氏は、彼のオフィスでの行動と彼の商取引を巡る捜査は政治的目的によって動機付けられていると主張し、不正行為を繰り返し否定しています。
民主党のマンハッタン地方検事長であるサイラス・ヴァンス・ジュニアは、トランプ・オーガナイゼーションとその役員による詐欺と金銭上の不正行為の疑いを調査していることを法廷文書で示唆しました。
調査はまた、トランプ氏の元弁護士であるマイケル・コーエンが、大統領との不倫関係について、沈黙を強いるために2人の女性に支払った「口止め料」の支払いについても調査しているようです。
連邦検察官は、コーエン氏が脱税と選挙資金法違反に対して有罪を認めており、トランプ氏が支払いを指示し調整したと陳述しています。
トランプ氏は不倫疑惑を否定し、ヴァンス氏の調査を「アメリカ史上最悪の魔女狩り」と呼んで強く非難しています。
彼はコーエン氏に法律に違反するように指示したことは一度もないと主張しました。
トランプ・オーガナイゼーションの弁護士は、ヴァンス氏の調査についてコメントすることを拒否しました。
マンハッタン地方検事局は、トランプ氏の8年間の納税申告書と、一連の財務書類の提出を求める大陪審召喚状を発行しました。
トランプ氏は、現職の大統領は犯罪捜査から完全に免責されていると述べ、召喚状を阻止しようとしました。
合衆国最高裁判所は7月にその主張を却下しましたが、トランプ氏が州法で認められている他の法的根拠を唱えることは可能であるとの判断を下していました。
トランプ氏は、召喚状が広範であり、悪意を持って発行されたと述べ、再度訴えを起こしましたが、連邦判事と控訴裁判所はいずれもその訴えを却下し、トランプ氏は再び最高裁判所に控訴しました。
最高裁判所はまだ訴えを審理するかどうかを明らかにしていません。
裁判所の文書によると、ニューヨーク州の司法長官である民主党員のレティシア・ジェームズは、2019年3月に、トランプ氏と彼の会社が経済的および税制上の利益を得るために資産の価値を不当に吊り上げたかどうかについての民事調査を開始しました。
トランプ・オーガナイゼーションの報道官は、調査はすべて政治的動機に関するものだと述べてこれを否定しています。
大統領の息子であるエリック・トランプ氏は、それを「反トランプ別件捜査(anti-Trump fishing expedition)」と呼んでいます。
司法長官事務所は、何ヶ月もの間、文書や電子メールを収集してきました。
エリック氏は10月、この件を巡り、宣誓証言を行っています 。
トランプ氏はまた、進展する可能性の高い私的訴訟にも直面しています。
コラムニストのE.ジーン・キャロル氏は、トランプ氏が1990年代半ばに彼女をレイプしたという申し立てを否定した後、名誉毀損訴訟を起こしました。
10月、連邦判事は、トランプ氏の代理人となることを求めた司法省の要請を却下しました。
これは、事件を事実上終結させたであろう法的措置です。
仮に判事がこれを認めていれば、訴訟の継続は事実上、不可能になっていたでしょう。
司法省はその判決に対して上訴することができます。
「ザ・アプレンティス(トランプ氏が出演していた人気番組)」の出演者であったサマー・ゼルボス氏によって提起された別の名誉毀損事件では、トランプ氏は性的違法行為について嘘をついていると非難されています。
大統領の弁護士は、合衆国憲法がニューヨーク州裁判所に提起された民事訴訟からの免責を『大統領』に与えると主張しました。
その問題は、州の最高裁判所である控訴裁判所で今も係属中です。
Trump Faces Legal Cases After White House Departure
The Wall Street Journal
今年の夏頃、米国の最高裁判所がトランプ大統領の免責特権の主張を一部却下したニュースは予想外だったこともあって、大きな騒動になりました。
当時は最高裁判官の判事の政治的スタンスは保守系4人に対し革新系4人と拮抗しており、裁判長であるジョン・ロバーツ主席判事が保守派と見做されていたため、トランプ氏の意向に添った判決が下されるだろうとの見方がもっぱらでした。
その後、リベラルの守護者の異名を取ったギンズバーグ判事の死去を受けて、エイミー・コーニー・バレット判事を大急ぎで承認させたのは皆様のご存知の通りです。
それらは自身が不利な立場に立った場合を想定した地均しであるとの見方が一般的です。
余談ですが、最近になってトランプ氏はエスパー国防長官を解雇し、代わってトランプ氏の熱烈な信奉者とみられているミラー氏を代理に据えました。
報道によれば、国防総省の当局者は匿名で「ペンタゴンは今、トワイライトゾーンにある」と語ったそうです。
どんな不可解な超常現象が起こっても不思議ではないという意味だと思います。
米国のメディアは、ホワイトハウスをまるで呪われた悪魔の館のように表現することが多くなり、最近は記事を読むのが辛くなってきました。
管理者 黒岩留衣