トランプは1930年代以来の民主主義に対する最悪の脅威です
民主主義を作るのは単に投票用紙を投げるだけではありません。
世界の多くの独裁者は形式だけの偽の選挙をしています。
国の政治システムの真の試練は、政治家が有権者の意志を尊重するかどうかであり、特に軍部を支配している最も強力な指導者が選挙に敗れた後、喜んで権力を放棄するかどうかです。
これは、ベラルーシやジンバブエなどの国が失敗し、米国が2世紀以上にわたって、とにもかくにも成功した試練です。
実際、答えが余りにも明白であるため、権力を放棄する意思について尋ねられた大統領さえほとんどいません。
ところが、今や米国はそうではありません。
水曜日にトランプ大統領は「権力の平和的移転」に取り組むかどうかを尋ねられ、明言を避けました。
彼は「まあ、我々は何が起こるかを見なければならないでしょう」と述べ、次に「投票用紙を取り除く」べきだと述べました。
おそらく彼は郵送による投票用紙のことを指していたと推定されますが、そこは明確ではありませんでした。
そして、次のような冷静な言葉で終わりました。
「率直に言って、権力の移転はありません。続きがあります」
これはトランプが常日頃から賞賛する独裁者が好む言葉です。
「面白いことに、私が持っている人間関係は、彼らがよりタフで、しかも卑劣であればあるほど、私は彼らとうまくやっていけるようです」と彼はボブ・ウッドワードに語ったことがあります。
「ええと…いくつか私に説明させてください。いいですか?」
それは少しも面白くもなく、可笑しくもなく、ただただ恐ろしく、しかも説明は簡単です。
トランプはロシアのウラジミール・プーチンやトルコのレセプスタイップ・エルドアンのような権威主義的独裁者と民主的なプロセスに対する侮辱を共有しているということです。
これまでアメリカ大統領がこのようなことを言ったことはありません。
ずっとです。
大統領がこのような台詞を公然と吐けば、失格となるはずです。
トランプが私たちの歴史の中で最低最悪の大統領ではなく、仮に最高の大統領だったとしても、民主主義のルールに対する拒否は、それだけで彼の選挙の敗北を保証するはずです。
しかし、現実はもちろん、そうではありません。
なぜなら、過去4年間で、我々はトランプの傍若無人に慣らされてしまっているからです。
確かに、彼は2016年に選挙の正当性を認めると言うことも拒否しました。
しかし、暴君のように話すのは、挑戦者よりも現職者のほうがはるかに不吉です。
高明なジャーナリストのバートン・ゲルマンは、過去に詐欺の証拠が存在するからといって、郵送による投票の全てが詐欺ではないと主張しています。
ですが、彼がそうしようとしている理由は、近年の民主党員が選挙日後にカウントされる郵便投票で大きなアドバンテージを持っているからです。
2018年、元空軍パイロットで共和党のマーサ・マクサリー候補は、選挙の日の夜、アリゾナ州上院議員選のレースで先頭に立っていましたが、すべての投票が完全にカウントされた後で敗北しました。
同州の投票の多くを占める郵送投票が遅れて開票され、クリステン・シネマ氏が逆転勝利したのです。
トランプ氏は「選挙不正だ」「民主主義を守れ!」などとツイートして批判しました。
今年は「ブルーシフト」がさらに大きくなり、これまでよりも多くの人々が郵便で投票し、共和党員よりも民主党員が郵送投票する意欲を表明しています。
トランプは郵送による投票用紙を「詐欺」と呼ぶことで、それらをことごとく破棄し、選挙の夜にカウントされた投票用紙にのみ基づいて勝者として宣言されることを要求するための地ならしをしています。
選挙の前に最高裁の判事を追加するというトランプの熱意は、投票の結果が最高裁判所によって裁定されるという仮定に、少なくとも部分的に基づいています。
「これは最終的に最高裁判所で判断されると思います。そして、私たちには9人の裁判官がいることが非常に重要だと思います」とトランプは言いました。
トランプは、選挙の結果ではなく、彼ができる方法で権力を掌握しようとしています。
これは悪夢のようなものです。
すでに社会科学者たちは、私たちが独裁政権に後退するかもしれないと警告しています。
現在、私たちは1930年代以来、民主主義に対する最悪の脅威に直面している可能性があります。
この時期の出来事が、ディストピア小説「ここでは起こり得ない(It Can’t Happen Here)」の舞台となりつつあります。
そして「ここでは起こり得る」に向かってすでに動いています。
共和党がトランプの権威主義的な本能を制限する可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。
上院多数派院内総務のミッチ・マコーネルは「11月3日の選挙の勝者は1月20日に就任する」と公約していますが、トランプが勝者として認定されることを保証するために、上院共和党は可能な限りのことを行うでしょう。
当然のことながら、一般投票だけでなく選挙人団でも敗北したとしてもです。
1876年以降の最悪の選挙危機を回避する唯一の方法は、ジョー・バイデンが選挙日に地滑り的に勝つことです。
2020年9月25日付オピニオン コラムニスト マックス・ブート氏の寄稿より抜粋
Trump is the worst threat to our democracy since the 1930s
The Washington Post
今日は米国メディアの各社説を比較していただくために、同じテーマで書かれた社説を2本掲載します。
この後でCNNのオピニオンも投稿しますので併せてお読みいただけると幸いです。
米国のアナリストたちは大統領選挙でトランプ氏が勝利する確率は低いとみています。
そしてトランプ氏の勝利の確率が低ければ低いほど、トランプ氏による民主主義に対する破壊行為に対する懸念が現実味を帯びていくという皮肉な状況に陥っています。