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トランプ氏、徹底抗戦の構え

by 黒岩留衣
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トランプ大統領は選挙結果を覆す試みにより一層注力しており、彼の敗北を断固受け入れない姿勢に批判的な態度を示す共和党員に対する攻撃も激化しています。

一方で、複数の主要な州では、選挙結果を公式に認定する期限が迫っており、彼の法的挑戦への道は閉ざされつつあります。

 

トランプ氏による、ジョー・バイデン候補の勝利を敗北へと逆転させようとする試みは、米国の現代史では類例のないものであり、共和党の議員や知事の間で軋轢の兆しが見られます。

2週間以上の間、有力な共和党員は、大統領の訴訟を起こす権利を支持してきました。

 

しかし現在、彼の努力は成功の見込みがないと信じている者や、選挙の完全性を擁護したサイバーセキュリティ担当者に対する突然の解雇に不満を表明している人もいます。

一部のトランプ顧問は、このまま選挙結果の受け入れを拒否し続けることは、彼の何百万人もの支持者に誤ったメッセージを与えかねないと懸念していると述べています。

 

今週、トランプ大統領は、彼が結果に異議を唱えている主要な州の議員に対し、個人的な圧力をかけるための努力をより一層強化しました。

木曜日、彼は州による選挙結果の証明を阻止しようと奮闘しているミシガン州の2人の忠誠心溢れる共和党指導者をホワイトハウスの会議に招待しました。

トランプ氏の法務チームは、こうした一部の州で、共和党が支配する州議会に対し、選挙結果の受け入れを拒否し、代わりにトランプ氏を支持する選挙人を任命させることを目指していると述べています。

 

バイデン氏は木曜日、選挙結果を覆そうとするトランプ大統領の努力を非難しました。

「彼は米国の歴史上、最も無責任な大統領の一人として歴史に名を残すことになるだろう」と彼は述べています。

「この男が何を考えているかを理解するのは困難です」

 

トランプ陣営が結果に異議を唱えている4つの州は、数日中に投票を証明する必要があります。

州は、勝者が正式に確認される前に、選挙結果を承認する手続きを必要とします。

選挙人団は12月14日に公式投票を行います。

上院多数派院内総務のミッチ・マコーネル(ケンタッキー州:共和党)は今週初め、州による選挙結果の証明が最終的な決着になると述べ、大統領の法的挑戦に対する終焉が近づいているとの認識を示しました。

 

現在、大統領の個人弁護士であるルディ・ジュリアーニ氏が率いるトランプ氏の法務チームは、ペンシルベニア州、ジョージア州、ネバダ州で依然として法廷での異議申し立てを行っており、郡全体または州全体の選挙結果を破棄するよう要求しています。

ジュリアーニ氏と協力している弁護士のシドニー・パウエル氏は、木曜日のフォックス・ビジネスのインタビューで「率直に言って、すべての激戦州における選挙結果は全面的に破棄されるべきであり、州議会はトランプ氏を支持する選挙人を選ばなければならない」と発言しました。

 

水曜日、トランプ陣営は部分的な再集計のためにウィスコンシン州に300万ドルを送金しました。

木曜日には、同陣営は、ミシガン州で最も人口の多い郡での認証を停止する努力にすでに成功したと主張し、州での訴訟を取り下げました。

これに対し、ミシガン州の州務長官の報道官は、郡の投票は認証されており、州の認証プロセスは全て計画どおりに進むと述べています。

ジョージア州グイネット郡で再集計を行う集計作業員

 

ジョージア州の州務長官は木曜日、大統領選挙の手作業による集計の結果、バイデン氏の勝利を確認したと述べました。

ミシガン州は月曜日までに結果を証明しなければなりません。

ペンシルベニア州も同様ですが、ジュリアーニ氏が今週初めに法廷に出廷し、裁判官に投票数の証明を阻止するよう要求しました。

ネバダ州は火曜日までに結果を証明しなければなりません。

 

ただし、広範囲にわたる詐欺の証拠は今もって何も提出されていません。

トランプ氏の弁護士の何人かは、現実にそのような詐欺が起こったとは思っていないと語っています。

大統領のある顧問は「トランプ氏は戦いに勝てないことを理解しているが、彼は『投票が盗まれた』と信じているので、法廷闘争を可能な限り推進することを止める気は無い」のだと述べています。

 

また、来年1月に行われるジョージア州の上院議員選挙の決選投票を控え、共和党支持層の投票意欲を高めるために、トランプ氏の法廷闘争は重要だとの見方もでています。

上院の過半数議席を民主党、共和党のどちらが握るかは、この2組の決選投票の結果で決まる見通しだからです。

 

ダラスの南メソジスト大学の大統領歴史家であるジェフリー・エンゲル氏は、大統領が選挙による敗北の受け入れを拒否した前例はないと述べました。

過去において、候補者が選挙結果に異議を唱えた前例はあったものの、そのような場合には明確で、かつ正当な議論がなされたと彼は述べました。

そして最終的には「彼ら全員が米国民の意識統一がより重要であると認識した」と述べています。

「私たち歴史家は、基本的な物語は前例に同じであり、従って前例に学ぶべきだという前提で思考します」とエンゲル氏は言いました。

「つまり、今のこの状況では、我々の言葉は無力だと言うことです」

 

トランプ氏は法廷闘争に焦点を合わせている一方、彼の公務や議題の計画にほとんど時間を費やしていないと行政当局者は証言しています。

選挙から16日間、彼の公的なスケジュールは数回の昼食会と国立アーリントン墓地への訪問だけであり、彼はそれ以外のすべての時間を開票プロセスについて不平不満を言うためだけに費やしています。

トランプ氏は、7月以来初めてのコロナウイルス対策チームによるブリーフィングにさえ出席しませんでした。

 

一方、トランプ氏の顧問らの間では、法廷闘争により軋轢と緊張が高まっているようです。

内情に詳しい関係筋が明らかにしたところによれば、先週初めに電話会議が開かれ、法廷の場でどのように一部の州の選挙結果を覆すことができるのかについての戦略が話し合われたといいます。

 

ですがそれ以降、側近の間では、訴訟戦略に対して懐疑的な見方が強まっているようです。

陣営のある側近は「不正があったとの希望が持てる時期もあったが、しだいに『本当に不正は存在するのか?』との雰囲気が支配的なってきた」と語っており、今ではもはや「恥ずべき状況になりつつある」と明かしました。

 

大統領執務室で先週行われた会合では、勝訴する見込みは「極めて薄い」と伝える他の弁護士に対し、ジュリアーニ氏は「お前たちは嘘をついている」として激しく批判したと伝わっています。

会議では罵声と怒号が飛び交い、極めて緊迫した空気が流れたとのことです。

 

トランプ氏はまた、自身の考えを支持しない共和党関係者に怒りの矛先を向けています。

今週にはツイッターで、オハイオ州のマイク・デワイン州知事(共和党)に対して、共和党予備選で対抗馬との競争にさらされるであろう可能性をちらつかせて脅迫しました。

デワイン氏はトランプ氏に対し、バイデン政権への移行に着手することを認めるよう求めていました。

 

またトランプ氏はジョージア州のブライアン・ケンプ知事(共和党)に対しても、電話やツイッターで、不正選挙の主張を支持するよう圧力をかけました。

デワイン、ケンプ両氏のオフィスは、コメントの要請に応じていません。

 

ジョージア州のブラッド・ラフェンスパーガー州務長官(共和党)もこれまで、投票プロセスは厳重かつ透明で、問題は何もなかったとの認識を示していいます。

17日夜には、トランプ氏はDHSのサイバーセキュリティー部門のトップを務めるクリス・クレブス氏の解任に踏み切りました。

クレブス氏は外国による選挙介入を防ぐための対策責任者であり、不正があったとのトランプ氏の主張に異議を唱えていました。
ジョン・コーニン上院議員(共和、テキサス州)は、クレブス氏の解任は「混乱に拍車をかけるだけだ」と述べました。

「もう何が正常かさえ分からない」

 

ベテランの共和党のストラテジストであるマイク・ドゥハイム氏は、トランプ陣営は現実を直視すべだと述べています。

彼はインタビューで「ドナルド・トランプは敗北した」と言明し「大統領の立場にあるものが、不正などないのに『不正があった』と発言するべきではない」と厳しく批判しました。

その上で、分別のある共和党議員の多くは「次の24年の大統領選挙でトランプが再度立候補するかどうかを心配して沈黙を強いられているだけである」と述べています。

 

The Wall Street Journal

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