Home 時事ニュース 続報:フランスの教会襲撃テロ

続報:フランスの教会襲撃テロ

by 黒岩留衣
327 views

木曜日、フランス南部の都市ニースの教会で発生したナイフ攻撃で3人が死亡しました。

これは、エマニュエル・マクロン大統領が「イスラム教徒によるテロ攻撃」と呼んだ行為であり、国は安全保障上の警告を最高レベルにまで引き上げました。

 

攻撃は、預言者ムハンマドを侮辱する風刺画をめぐる一連の緊張の中で起こり、表現の自由について子供たちに教えるために、彼らに退室の自由を認めた上で風刺画を見せたパリ郊外の教師が、イスラム教徒に殺害され、首を切り落とされるというショッキングな事件から2週間にも満たないうちに起こった出来事でした。

 

フランス政府は、あらゆる宗教に対する批判の権利を表すものとして風刺画を擁護しました。

フランス国内外の多くのイスラム教徒は、風刺画を非常に不快な挑発と解釈しています。

イスラム世界全体でフランス製品のボイコットが求められています。

 

木曜日の午後、ニースの事件現場で、マクロンは攻撃を非難し、表現の自由の擁護を主張しましたが、ムハンマドの風刺画については明確に言及しませんでした。

マクロンは、フランスのテロ対策特別治安部隊の3,000人から7,000人のメンバーを、特に教会、学校、その他の宗教施設に配備することを発表しました。

「我々は一歩たりとも退きません」

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は即座に攻撃現場を訪れた。

 

政府がイスラム教徒のグループに対して身構える中、フランスは殺害された教師サミュエル・パティを悼みました。

過激なイスラム教徒グループはより多くの攻撃を示唆しており、フランスは特定のイスラム諸国の市民に特別な注意を払うよう警告しました。

また、木曜日(預言者の誕生日)に、サウジアラビアのジッダにあるフランス領事館の外の警備員が刺されるという事件も発生しています。

フランス領事館は声明のなかで、彼は生命を脅かすような怪我を負わなかったと述べました。

 

ニースでの攻撃は、午前9時直前にノートルダム・ドゥラソンプション大聖堂で発生しました。

テロ対策特別検察官のジャン・フランソワ・リカードによると、3人が死亡していることが確認されました。

60歳の女性は首を斬り落とされました。

55歳の男性は教会内で刺殺されました。

44歳の女性は、大聖堂で攻撃され、通りの向かいのレストランまで逃げた後、死亡しました。

 

リカード検察官は、容疑者を先月イタリアのランペドゥーサ島を経由してヨーロッパに到着した21歳のチュニジア人であると特定したと述べました。

リカード検察官によれば、警察が教会に到着したとき、男は彼らに近づきアラビア語で「アッラー・アクバル」または「神は偉大なり」と繰り返し叫んだとのことです。

彼は警察隊に撃たれ、病院に運ばれ、そこで手術を受け、現在は危機的な状態が続いていると検察官は述べました。

 

コーランのコピーが容疑者の所持品の中から発見され、攻撃に使用されたと思われる約12インチのナイフも見つかったとリカール氏は述べました。

彼は他に2本のナイフが教会で見つかったとも付け加えました。

 

フランスのメディアによると、さらに木曜日に、フランス南東部にある街アヴィニョンで通行人をナイフで脅していた男性を警察官が狙撃したと報じました。

リヨン県庁からフランスのルモンド紙への声明によると、当局はペラーシュ駅近くのリヨン中心部で約12インチのナイフを振り回した別の男性、26歳のアフガニスタン人を逮捕しました。

それらの攻撃がニースの殺傷事件に関連していたかどうかは明らかではありません。

 

SITEインテリジェンスグループ(白人至上主義者とジハード主義組織のオンライン活動を追跡する米国の非政府組織)によると、木曜日のテロ攻撃後、ジハード主義者(サラフィー・ジハード主義者:イスラム教過激派)たちはソーシャルメディアとフォーラムを歓声で満たし、多くの人がオサマ・ビン・ラーディンの言葉を共有しました。

「表現の自由が境界線のこちら側を尊重しない場合、我々の行動の自由に立ち向かう覚悟をせよ」

SITEによると、イスラム国(Islamic State:IS)はイスラム圏で活動しているフランス人およびフランス企業を標的にするよう呼びかけています。

 

トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は今週、フランスのマクロン大統領と感情的に衝突し、フランスでの風刺画の擁護とイスラム教徒に対する干渉に怒りを表明し「彼には精神的な治療が必要だ」と述べました。

リビアの内戦と地中海東部のエネルギー鉱床に対する主張をめぐってフランスと戦略的論争を繰り広げているトルコは、フランス製品のボイコットの呼びかけを主導していました。

 

しかし木曜日に、トルコ政府はニースで発生した流血事件を非難し、犠牲者の遺族に哀悼の意を表しました。

トルコの外務省が発表した声明によれば「人の殺害を許し、暴力を正当化する理由はない」と述べたといいます。

「聖なる礼拝所でこのような残忍な攻撃を組織した人々が、我々と宗教的、道徳的価値観を共有していないことは明らかです」

 

米国のトランプ大統領は木曜日にフランスへの支持を表明し、その一方で、テロ事件を民主党の政敵であるジョー・バイデンを打ち負かす道具として利用しました。

「バイデンが大統領になったら、フランスでの恐ろしい攻撃は、私たちの町に来るでしょう」とトランプは言いました。

 

風刺新聞シャルリー・エブドによって発行されたフランスの風刺画は、現在、複数の暴力事件と結びついています。

シャルリー・エブド自身が2015年1月に大規模なテロ攻撃の犠牲になり、イスラム教徒の2人の兄弟が12人のジャーナリストを次々に殺害し、現場から逃走をはかったとき「預言者に対する侮辱の復讐だ」と主張しました。

 

先月、シャルリー・エブドが風刺画を再出版した後、2人が新聞の旧事務所の外で刺されました。

そして、2週間前、中学校の教師であるサミュエル・パティ氏が、クラスの子供たちに表現の自由を教えるために風刺画を見せたことが地域のイスラム教徒の反発を呼び、彼は殺害され、首を斬り落とされました。

それは国に衝撃を与えた恐ろしい事件でした。

 

フランス政府が風刺画を擁護することは、一部のフランス国民にとっては不快なことかもしれませんが、国民のアイデンティティの基本的な部分です。

「言論の自由や報道の自由を含む市民の自由は、歴史的に宗教的制約からの解放として獲得されてきたものです」とフランスの政治アナリストでスタンフォード大学のセシル・アルデュイ教授は述べています。

 

「フランスでは、表現の自由が勝ち取られたのは教会に対する反旗からでした」と彼女は言いました。

「風刺画は、たとえそれを支持していなくても、宗教的冒涜はもはや犯罪ではなく、宗教が人々に何も指示できないことの象徴として見られています」

フランスの世俗主義、またはライシテ(政教分離)の歴史の研究家であるパトリック・ワイル氏は、ムハンマドに対する風刺画は特定の個人またはグループに対する侮蔑ではなく、宗教を批判する自由の象徴として許容されるべきであると述べました。

 

マクロンは殺害された教師サミュエル・パティの死を悼む演説で「イスラム教の過激な思想教育は、テロリズムまたは反社会的思想の醸成に役に立っている」と述べて、彼の国でのイスラム教の慣行を「改革」する意思を表明しました。

政府はまた、テロリストによる暴力を助長したとして50を超えるイスラム組織に対する取り締まりの強化を発表しています。

 

事件が起こったニースは、2016年にフランスに住むチュニジア人が故意に民衆の列に車で飛びかかり、86人の無辜な市民を死に追いやった凄惨なテロ事件の現場そのものでした。

 

After knife attack kills three at church in Nice, Macron says France will not give in to terrorism

The Washington Post

保守派のキリスト教徒の人たちは胸に十字架のペンダントをしていることがよくあります。

ホワイトハウスのケイリー・マクナニー報道官などは常に十字架のペンダントをつけていますが、仮に彼女がフランスに旅行したとしたら、彼女はそれを外す事を要求されるはずです。

フランスにおける政教分離とは『攻撃的な政教分離』を意味しており、日本のような『消極的政教分離』とは一線を画します。

フランスでは宗教的思想に対する緊張を解こうものなら、あっという間に表現の自由が汚染されてしまうとの認識があるようですが、こうした対応が逆にイスラム教徒の強い反発を煽る結果に繋がっているのも事実です。

管理者の本音を正直に言えば、テロリストを憎むことと宗教を憎むことが同列に語られるのに違和感を感じています。

それにしても文化って何なんでしょうね?

 

管理者 黒岩留衣

PR

外信記事を日本語でお届けします