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米中ハイテク冷戦の高いつけ

by 黒岩留衣
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米国と中国という2つの超大国のハイテク冷戦によって世界は今、高い代償を払わされています。

米中の対立はすでに両国のハイテク産業を大きく混乱させ、大手ハードウエアメーカーや半導体設計会社のほか、ソーシャルメディア・サービスにも悪影響を及ぼしています。

その波紋は今や米国の農村地帯や欧州、あるいは世界の隅々にまで広がり、業界を超えた影響が明らかになりつつあります。

 

特に打撃を受けているのは通信と半導体の分野です。

トランプ政権はこれらの分野で中国の主要企業を米市場から閉め出し、米国企業による対中輸出を制限しました。

売上高の喪失や中国製通信機器の代替品への交換などによるコストは数十億ドルにも上る可能性があると見積もられています。

しかも影響はハイテク企業の収支だけにとどまらず、はるかに広範囲に及ぶものです。

米半導体メーカーは対中販売の喪失が研究開発費の減少につながることを懸念しています。

そうなれば、世界の半導体業界のリーダーとしての米国の地位を支えてきた最先端の半導体の生産を続けることが難しくなるためです。

米国では中小の通信事業者がZTEやファーウェイの機器を購入するために公金を使うことが禁止されている

 

米中対立は、中国製の無線通信設備やインターネット機器を導入していた欧州各国や米国の農村地帯で高速通信の普及を遅らせる可能性があります。

このため欧州企業は、第5世代通信規格(5G)の技術を必要とする製造、保健医療、運輸、その他多くの業界において、国際的に不利な立場に置かれる可能性が指摘されています。

米国の農村地帯の何十万もの企業や家庭にとっては、高速で信頼性の高いインターネットの普及が何カ月も、場合によっては何年も遅れることになるかもしれません。

 

米国の現、および元当局者らは、こうした代償は長期的に見れば、払う価値があるものだと主張しています。

中国の通信機器メーカーに対する強硬な措置は、中国政府が関与するとみられるスパイ行為から民主国家を守ることにつながると主張しています。

彼らはまた、米国の輸出規制(中国の一部主要半導体メーカーによる最先端製品の生産を著しく困難にするもの)は、中国政府が自国の半導体メーカーに供与している補助金の効果を減殺することで、より公正な世界半導体市場の形成を助けるとも述べています。

さらに米国の半導体メーカーは、中国のライバル企業との競争で製品を値下げする必要がなくなるため、長期的には研究開発により多くの資金を投入できるようになるとも述べています。

 

一方で、米中対立による損害が広がる可能性もありえます。

例えば中国が、同国を重要な市場とみなすアップルやクアルコムのような米ハイテク企業に対する障壁を高めた場合がそうです。

 

現段階で最も打撃を受けているのは、中国企業として国際事業で最も成功している華為技術(ファーウェイ)であることは疑いありません。

米国の輸出規制によって、同社のサプライチェーンの大半が寸断されました。

米国政府は、中国政府がファーウェイにスパイ行為やサイバー攻撃を行うよう強いる恐れがあると主張し、欧州などの同盟国に同社を5G通信網から除外するよう働きかけ、ある程度の成功を収めています。

ファーウェイと中国政府は米国の主張を否定し、そのような事は起きないと反論しています。

 

昨年の売上高が1230億ドルのファーウェイは世界最大の通信機器メーカーであり、同時に世界最大級のスマートフォンメーカーです。

しかし、同社の郭平副会長は最近「生き残ることに必死だ」と述べました。

ハードウエア製造に必要な、米国の技術で作られた半導体の調達が米国の規制によって脅かされているからです。

同社の広報担当者は、米国の輸出規制による金銭的なダメージの推計は来年までは出ないだろうと話しています。

 

郭氏によると、最大の困難に直面しているのはコンシューマー部門です。

昨年の同部門の売上高は670億ドルと、全体の売上高の大半を占めています。

同部門は自社製スマホのカメラで高く評価されているが、それらは全て米国の輸出制限の影響を受ける先進的な半導体を必要としています。

 

米国や欧州、アジアでファーウェイに販売する半導体の設計や製造を行う企業も大きな打撃を受けています。

ある米政府高官は、国家安全保障に影響を与えない技術(旧式のインターネットルーターや携帯電話向けの部品など)の輸出に関しては、商務省がケース・バイ・ケースで米国企業に認可を与える公算が大きいと述べました。

ただ米国のサプライヤーがコストの一部を負担する可能性が高いことも認めました。

こうした企業のコスト負担を政府が支援する計画は今のところないと言われています。

 

顧客サイドに関しては、ファーウェイに対する米国の対応に従うよう同盟諸国に求める取り組みは、欧州で一定の成功を収めています。

英国やポーランドなどは中国製通信機器を制限することで事実上合意しました。

その他の国々、とりわけドイツでは、追随するかどうかについて依然議論が続いていますが、欧州連合が最近出した勧告に従う可能性が高いとみられています。

EUは加盟国に対し、リスクの高いサプライヤーから調達した機器の使用を制限することを勧告しました。

このサプライヤーのにはファーウェイが含まれています。

 

英国政府によると、自国のサイバーセキュリティー当局者にとっては、ファーウェイの供給網を寸断した米国の規制のせいで、同社製機器がスパイの脅威やサイバーセキュリティー上の脅威をもたらさないように徹底することが難しくなったと述べています。

匿名の英国当局者は、ファーウェイが国家安全保障のリスクをもたらすような新たなサプライヤーから部品を購入し始める恐れがあることを懸念していると語りました。

 

The Wall Street Journal

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